そこで今回の研究では、地上を走る鳥類を使い、実際に柔らかい地面を歩かせて、アレクサンダー式の精度を検証することにしました。

選ばれたのは「ホロホロチョウ(学名:Numida meleagris)」という鳥です。
彼らは二足歩行で歩く姿が小型獣脚類に似ており、脚の構造や関節の動き、そして足の形も非常に類似しています。
また、歩行速度や走行速度にもバリエーションがあり、今回のような速度検証には最適なモデル動物でした。
実験では、泥の硬さを「固い・柔らかい・非常に柔らかい」の3段階に分け、それぞれの状態でホロホロチョウに自由に歩行・走行させました。
各トライアルの動きを高速度カメラで撮影した後、足跡を3Dスキャンして、実際のスピードとアレクサンダー式による推定スピードを比較しました。
足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?
実験の結果は驚くべきものでした。
ホロホロチョウが「時速1km(秒速0.28m)」というゆったりとしたスピードで泥の上を移動していた際に観測された例では、その足跡をアレクサンダー式で解析すると、時速4.7km(秒速1.3m)と算出されたのです。
これはなんと、実際のスピードの4.7倍。
このズレを大型恐竜にスケーリングすると、時速4kmで歩いていた恐竜が、足跡解析では時速19kmで走っていたと推定されることになります。

さらに注目すべきは、同じ歩幅であってもスピードが異なる場合があったという点です。
ホロホロチョウが連続して踏んだ足跡のうち、歩幅が0.37mのものでも、全く異なるスピードで前進するケースがありました。