そこで今回の研究では、地上を走る鳥類を使い、実際に柔らかい地面を歩かせて、アレクサンダー式の精度を検証することにしました。

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ホロホロチョウの足跡からスピード計算法の正確性を分析 / Credit:Tash L. Prescott(LJMU)et al., Biology Letters(2025)

選ばれたのは「ホロホロチョウ(学名:Numida meleagris)」という鳥です。

彼らは二足歩行で歩く姿が小型獣脚類に似ており、脚の構造や関節の動き、そして足の形も非常に類似しています。

また、歩行速度や走行速度にもバリエーションがあり、今回のような速度検証には最適なモデル動物でした。

実験では、泥の硬さを「固い・柔らかい・非常に柔らかい」の3段階に分け、それぞれの状態でホロホロチョウに自由に歩行・走行させました。

各トライアルの動きを高速度カメラで撮影した後、足跡を3Dスキャンして、実際のスピードとアレクサンダー式による推定スピードを比較しました。

足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?

実験の結果は驚くべきものでした。

ホロホロチョウが「時速1km(秒速0.28m)」というゆったりとしたスピードで泥の上を移動していた際に観測された例では、その足跡をアレクサンダー式で解析すると、時速4.7km(秒速1.3m)と算出されたのです。

これはなんと、実際のスピードの4.7倍

このズレを大型恐竜にスケーリングすると、時速4kmで歩いていた恐竜が、足跡解析では時速19kmで走っていたと推定されることになります。

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足跡から恐竜のスピードを推定するアレクサンダー式では大きな誤差が生じる。恐竜はもっと遅かったのかもしれない / Credit:Canva

さらに注目すべきは、同じ歩幅であってもスピードが異なる場合があったという点です。

ホロホロチョウが連続して踏んだ足跡のうち、歩幅が0.37mのものでも、全く異なるスピードで前進するケースがありました。