すると、興味深い違いが浮かび上がりました。

暴力的なシーンをプレイしていた参加者たちは、「プレイが進むにつれてストレスを感じた」「あまりリラックスできなかった」と主観的に回答しました。

一方で、非暴力的なシーンをプレイした人たちは、「終わった後にはリラックスしていた」と感じたと答えています。

ところが身体の反応は、まったく異なる“真実”を語っていたのです。

暴力的ゲームでも身体はリラックスしていた

冷水テストの直後、どちらのグループでも心拍数とコルチゾール濃度が大きく上昇していました。

これは、確かに強いストレス状態にあったことを意味します。

しかしゲームプレイ後、この数値はどちらのグループでも明確に低下していたのです。

暴力的なシーンをプレイしていたグループでも、非暴力的なグループでも、身体は明らかにリラックスし、ストレス状態から回復していたことが確認されました。

つまり、プレイヤーが「緊張した」「怖かった」と思っていたとしても、生理的にはストレスが減っていたのです。

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Credit: canva

研究者たちは、この「主観と生理反応のズレ」に注目しました。

人は自分の感情をゲームの内容や難易度によって判断してしまう傾向があるため、実際の身体の反応とは違った自己評価をしてしまうというのです。

例えば、「このゲームは怖いから、きっとストレスがたまっているはず」と思い込み、それに応じた感情を抱いてしまうこともあるのかもしれません。

しかし、暴力的な内容のゲームであれ、一定時間プレイをすることによって、身体のストレスシステムは回復しようとしている。これはまさに、ゲームがストレス対策の一つになり得ることを示す結果です。

ただし注意点もあります。

この研究で使われたゲームは1作品だけであり、必ずしもすべてのゲームに同じ効果があるとは限りません。

また、過度なゲーム依存や睡眠不足を引き起こすようなプレイスタイルは逆にストレスを悪化させる可能性もあるため、節度が求められます。