もし鳥たちが体内時計に従って鳴く時間を決めているのであれば、一貫して朝の鳴き声が増えると予想されますが、そのような傾向は特になかったのです。
このように、長年「環境」や「生理」によって説明されてきた「朝のさえずり」という現象が、実は「社会戦略の一環」であったことが、今回の研究によって初めて明確に示されたのです。
つまり、早朝に鳥が鳴くのは、縄張り意識強い鳥や、雑食性の仲間と協力して採餌行動を取る鳥たちであり、鳥たちは生態的なニーズに応じて戦略的に鳴いていたのです。
研究チームは、今後さらに行動観察や個体識別を組み合わせることで、鳴き声の意味や機能をより深く理解できるだろうと述べています。
朝のさえずりが違って聞こえてくるかもしれない
今回の研究は、私たちが何気なく耳にしてきた鳥のさえずりに、新たな意味を与えるものです。
朝聞こえる鳥のさえずりは、涼しくて空気の澄んだ朝の時間を楽しんでいたり、朝の挨拶を交わしているような朗らかな印象がありましたが、実際は縄張りの主張や、狩りの合図など戦略的な理由によるものだったのです。
ニワトリの朝鳴きは、過去の実験によって体内時計(生物の中の時間)にしたがって決まっていることがわかっています。たとえ暗い部屋に入れて外の様子が見えなくても、毎日ほぼ同じ時間に鳴くのです。
つまり、ニワトリの「朝鳴き」は習慣や社会的な駆け引きではなく、生理的に決まっている行動なのです。
これに対して、今回の研究で明らかになった野鳥の鳴き声は、「とにかく朝に鳴く」のではなく、その種の生き方や縄張り争いなどの“戦略”によって、朝を選んで鳴いているという違いがあります。
朝に鳥たちが鳴くというのは、当たり前の自然の景色ですが、科学は、身近な音や風景に隠された「意図」や「意味」を見つけ出す力を持っているのです。
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参考文献
Study reveals why the early bird sings early
https://news.cornell.edu/stories/2025/06/study-reveals-why-early-bird-sings-early