このような状況で有権者が自民党から離れていくのは、至極当然の結果と言えよう。長年の一党優位体制の中で、権力の腐敗と驕りが極限まで進行してしまった。野党の批判に耳を貸さず、メディアの追及をかわし、国民の声を無視し続ける姿勢は、もはや民主主義政党としての体をなしていない。

民主主義において、政権交代は健全なシステムの証である。権力の固定化は必ず腐敗を生む。これは歴史が証明する普遍的な真理だ。自民党は一度下野し、野党として自らを見つめ直す時期に来ている。2009年の政権交代の際も、下野期間中に党改革が進められたが、結局は元の木阿弥に戻ってしまった。今度こそ、より徹底的な改革が必要だ。

権力の座から離れることで初めて見えてくる問題もある。国民の生活実態、社会の変化、時代の要請を、野党の立場から虚心坦懐に見つめ直すことで、真の自浄作用が生まれる可能性がある。それは単なる人事の刷新や表面的な組織改革ではなく、政治文化そのものを変革する根本的な改革でなければならない。

また、政権交代は野党にとっても試練となる。政権担当能力を示し、具体的な政策を実行する責任が生じる。この緊張感こそが、日本の政治全体のレベルを向上させる原動力となるはずだ。

今こそ、日本の政治に真の緊張感と変革が必要な時である。国民は、もはや小手先の改革や表面的な反省では満足しない。政治とカネの問題を根本から断ち切り、国民生活を第一に考える政治への転換を求めている。そのためには、一度既存の権力構造をリセットし、新たな政治文化を構築する必要がある。政権交代は、その第一歩となるだろう。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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