専門家頼みの「業務の属人化」を脱却

 このシステムの導入により、故障発生時の早期復旧が見込めるといった効果があるという。

「効果としては以下の3点を想定しています。 (1)信号通信設備故障発生時の早期復旧  最適な手順での作業により、故障から復旧までの時間短縮が見込まれます。原因特定の難しい複雑な事象において、復旧までの時間を従来の約50%に短縮できることを見込んでいます。 (2)お客さまへのタイムリーな情報提供  提示された『復旧見込時刻』を基に指令員が判断することで、運転見合わせ時の『運転再開見込時刻』をお客さまへ早期に提供することが可能になります。 (3)社員の知識と経験依存からの脱却  現在は、復旧にあたる社員には専門知識と経験を活用して状況を把握し、適切な判断をする能力を求めています。信号通信設備は現地にあわせた多種多様な設備を配備しているため、とくに指令においてはすべての地域のすべての設備に対する専門知識と経験を持つ社員を育成することが課題です。そこで、この知識と経験が必要な部分を生成AIがサポートすることで、基本的な知識と経験があれば判断できる状態に近づけていくことを見込んでいます」

 JR東日本は、鉄道の運行管理・保守にAIを導入する実証実験を9月に開始する予定だ。

「ATOSトラブル発生時に監視端末に表示される警報を生成AIに読み込ませ、故障の原因と思われる装置を提案させます。この手法と、マニュアルやノウハウなどを基にした現状の故障原因の調査手法とを比較し、どの程度の時間短縮や省力化が可能か、効果測定を行います」

 同社はこの実証実験により、故障原因の調査時間が短縮されることでトラブルの早期復旧ができるようになり、輸送のさらなる安定性向上に寄与することを目指している。

「故障原因の調査の省力化により、専門家頼みの『業務の属人化』を脱却するとともに、生み出された時間を活用して、新しい事業の開発や地域活性化、お客さまサービスの充実など、社員が人ならではの創造的な役割に注力できるようになることを目指しています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)