私は、別途トランプ大統領の高関税政策を、19世紀アメリカに存在していた高関税「アメリカン・システム」に思想的淵源を持つものだと説明してきている。トランプ大統領自身が、そのことを何度も明言している。
しかし、依然として日本国内では、「そんな説明はいらない、要するにトランプが奇人だということだ、ただそれだけのことだ」、という風潮が、あまりに根強い。「専門家」と称する学者や評論家層が、繰り返し現れては、メディアやSNSでその種のことを主張し続けている。
このような世相の中では、理知的な計算に基づいた交渉戦略を練って、現実的な落としどころの確保をもって一定の成果としていくような態度をとることは、極めて難しい。
私は日米関税交渉の行方には当初から悲観的である。参議院選挙終了後に、「専門家」及び大衆への迎合的な態度を、石破内閣が改めていく可能性もないわけではないとは思う。しかし基本線としては、8月以降の日本のさらなる停滞と迷走は、折り込み済の予測としておかなければならないようだ。
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