川崎フロンターレからプレミアリーグ(イングランド1部)のトッテナムに加入した日本代表DF高井幸大は、クラブからの離脱発表が6月30日(実際の離脱は7月5日~)、トッテナムへの加入発表は7月8日と短期間だ。一方で横浜F・マリノス所属のFWアンデルソン・ロペスは、7月5日に例のフレーズで離脱が発表されるも、1週間経過した7月12日現在まで具体的な移籍先は発表されていない。このように、発表のタイミングはチーム事情により様々である。つまり、「チーム離脱」とは事実を最小限で伝えつつ、リスク回避のバランスを取った表現といえるだろう。

ラ・リーガ 写真:Getty Images

移籍報道を取り巻く文化差

ヨーロッパの移籍市場では、こうした「非公式な離脱」は日常的に行われている。選手が練習から外れ、空港で目撃され、SNSにユニフォーム姿が流出してもクラブは何も発表しない。しかし、報道陣もファンも「もう移籍は決まりだ」と理解している。正式発表は、あくまでメディカルチェックと契約がすべて完了してから。こうした情報の“先行と遅延”は、ある種のサッカー文化でもある。

この文化を象徴するのが、移籍ジャーナリストの存在だ。なかでもイタリアのファブリツィオ・ロマーノ氏は、世界中の移籍情報を正確に報じることで知られており、「Here we go!」の一言は“移籍確定印”のように機能している。彼の発信はクラブの公式発表より早く、そして信頼性も高い。移籍が“推測”から“確定”になる過程を、ファンが能動的に追いかける文化が根づいていることの表れだ。

一方、Jリーグは情報管理が慎重であり、こうした報道にまだ慣れていない部分もある。「チームを離れた」という事実が先に出てくると、ファンは不安にもなる。とくに主力選手や若手有望株の離脱となれば、その動向に敏感になるのは当然だ。また、日本のクラブ広報は“丁寧であること”が優先される傾向にあり、海外の“察してほしい”スタイルとは異なる。この違いも、情報公開に時間差が生まれる一因になっている。


ヴィッセル神戸とファジアーノ岡山のサポーター 写真:Getty Images

想像力でJリーグをさらに面白く