ダイエットは見た目の変化だけでなく、体の内部にも劇的な変化をもたらすようです。
英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究で、体重を減らすことで体の脂肪組織に蓄積された「老化細胞」が除去され、組織全体が若返る現象が起きていることが明らかになりました。
しかも、その若返り効果は見た目のスリム化だけでなく、糖尿病や慢性炎症といった生活習慣病の予防にも関わっているようです。
研究の詳細は2025年7月9日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。
目次
- 減量で「老化細胞」が消える
- 「代謝の若返り」と病気リスクの低下
減量で「老化細胞」が消える

「老化細胞」とは、年齢やストレスによってダメージを受け、正常に働かなくなった細胞のことです。
こうした細胞は自ら増殖することはありませんが、周囲に炎症を引き起こす物質を放出するため、組織全体の機能を悪化させる原因になります。
今回、研究チームは、25人の重度肥満の被験者について、減量手術の前後で腹部の脂肪組織を採取し、17万個以上の細胞を詳細に調べました。
さらに24人の健康体型の人の脂肪細胞とも比較しました。
その結果、肥満状態の脂肪組織には、老化細胞が多く存在することが確認されました。
特に、脂肪細胞そのものだけでなく、脂肪を作り出す前駆細胞や血管の細胞にも、老化のサインが強く現れていました。
しかし驚くべきことに、体重を平均25kg減らしたあとには、これらの老化細胞が劇的に減少していたのです。
なかでも、細胞の老化を示す代表的な指標「p21タンパク質」を持つ細胞は、減量後にはほとんど検出されなくなっていました。
つまり、体重を減らすことによって、体の中の「老化した脂肪細胞」が自然と除去されていたのです。
この発見は、減量がただの脂肪の減少ではなく、組織そのものの「細胞レベルの若返り」を引き起こす可能性を示しています。