本来、書物は刊行された瞬間から、一人歩きをする。私が2003年の1年間でやみくもに突き進んで高田生誕120周年記念企画でまとめあげた4冊もまたそうであろう。ウェーバーもデュルケムもパーソンズも精読に値するのと同様に、高田の社会学書も欧米の大家の作品にひけをとらないと今でも考えている。
刊行21年後のアマゾンでの「書評」
その一例として、刊行21年後の2024年6月23日にアマゾンに投稿されたMrPop氏による『高田保馬リカバリー』の「書評」を紹介しておきたい。きちんと読んでいただいたMrPop氏にお礼を申し上げる。
5つ星のうち5.0 「知の巨人」高田保馬を甦らせる
高田保馬(1883年生~1972年没)は戦前の日本を代表する社会学者・経済学者である。しかし戦後名声を失い、今ではその名を知る人も少ない。高田はどのように偉大だったのか、なぜ無視されることになったのか、今日私たちが学ぶべき高田の遺産は何か。本書はこのような問いに正面から答える知的刺激に満ちた一書である。高田の2世代も後の社会学者・金子勇教授の執念の書(編集本)でもある。いずれの章も興味深いが、富永健一教授による高田とパーソンズの比較論、中西泰之教授による人口論史における高田の位置づけ、小林甫教授による高田の農村論の批判的検討はとりわけ教えられることが多かった。社会学・経済学・人口学ともに細かい分析に終始することが常となった今日、高田のようなスケールの大きな論法は魅力的である。
未公開写真と「和歌」の紹介
なお、本書を準備するため、2002年時点ではご存命で、芦屋市に住んでおられた高田長女の関明子様宅を訪問した。『高田保馬リカバリー』出版企画を喜ばれ、その際にご提供いただいた高田の未公開写真を4枚使用できたので、参考までに高田の数多くの「和歌」から私が精選した16首とともにご紹介させていただくことにする。
【参照文献】
金子勇編,2003,『高田保馬リカバリー』ミネルヴァ書房. 高田保馬,1922=1971=2003,『社会学概論』ミネルヴァ書房(解説は富永健一). 高田保馬,1925=2003,『階級及第三史観』ミネルヴァ書房(解説は金子勇). 高田保馬,1940=1959=2003,『勢力論』ミネルヴァ書房(解説は盛山和夫). 高田保馬博士追想録刊行会編,1981,『高田保馬博士の生涯と学説』創文社:202-208. Yasuma Takata,1989, Principles of Sociology ,University of Tokyo Press.