研究を主導したシラ・ファイゲンバウム・ゴロヴィン助教(デューク大学)は「もしリンカーン大統領が書いたとされる文書の断片が見つかったとして、それが本物か偽物かを調べるのにもこの手法が役立つでしょう」と述べています。

実際、研究チームは今後死海文書など他の古代文献にもこの方法を適用し、新たな発見につなげたいとしています。

将来的には古代ギリシャ・ローマの古典やシェイクスピア作品など、他の歴史的文献への応用も期待されています。

ハイファ大学のイスラエル・フィンケルシュタイン教授は「この研究は古代文書を分析する新たなパラダイム(枠組み)を提示するものだ」と評価しています。

実際、本研究はデジタル人文学と呼ばれる分野における一大マイルストーンとも言えるでしょう。

自然科学系と人文系の研究者が力を合わせることで、人類の文化遺産をデータに基づき分析するという新しいアプローチが現実のものとなりました。

共同研究に参加したファイゲンバウム・ゴロヴィン助教は「科学と人文学の間の独特な協働です。驚くべき共生関係で、学問の境界を押し広げる革新的な研究に関われて幸運です」と語っています。

古代の知恵と最新AI技術の出会いが、生きた歴史をさらに深く読み解く鍵となりつつあります。

科学の目で読み直すことで、聖書という人類共有の遺産に新たな光が当てられ始めました。

これからもAIは人文学の強力な相棒となり、過去から未来への架け橋となる発見をもたらしてくれるでしょう。

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元論文

Critical biblical studies via word frequency analysis: Unveiling text authorship
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0322905

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。