「親のいない子供を養子として育てる」そんなエピソードは「優しく温かい話題」かもしれません。
ところが、その養子が誘拐された子供だったとしたら、印象は逆転して、一気に「恐ろしい話」に変わります。
実は、このような事件が海の動物たちの間でも生じたようです。
西アイスランド自然研究センターに所属するマリー・ムルスチョック氏ら研究チームが、メスのシャチがゴンドウクジラの一種「ヒレナガゴンドウ」の赤ちゃんを育てていたと報告しました。
しかもその赤ちゃんは誘拐された子だった可能性が高いというのです。
研究の詳細は、2023年2月17日付の学術誌『Canadian Journal of Zoology』に掲載されました。
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- 「クジラの子を養子にとったシャチ」は誘拐犯かもしれない
「クジラの子を養子にとったシャチ」は誘拐犯かもしれない

2021年8月、研究チームは、アイスランド西部の海で赤ちゃんと一緒に泳ぐメスのシャチ(学名:Orcinus orca)を発見しました。
このシャチは、「サディス(Sædís)」と命名されました。
サディスが注目されたのは、サディスと一緒に泳いでいた赤ちゃんがシャチではなく、ゴンドウクジラ属のヒレナガゴンドウ(学名:Globicephala macrorhynchus)だったからです。
研究チームの観察によると、サディスは単にヒレナガゴンドウの赤ちゃんに付き添っていただけではありません。
積極的に赤ちゃんの世話を行っていたのです。
また周囲には、サディスと同じ群れだと思われる2頭のシャチも一緒に泳いでいました。

対照的に、その赤ちゃん以外のヒレナガゴンドウは存在しなかったようです。
そしてヒレナガゴンドウの赤ちゃんは、サディスの胸ビレのすぐ後ろを泳いでいました。