30~59歳の就労世代の男性ではリスクが最大となり、熱中症リスクが最大1.7倍に跳ね上がっていました。屋外作業や職場での暑熱暴露が要因として考えられます。
またこれらのリスク上昇は、猛暑日でなくても現れていたのです。
「気温30℃以下」でも油断できないリスク
驚くべきは、「30℃以下」という、一般的には“それほど暑くない日”でさえ、糖尿病患者の熱中症リスクが高かったという点です。
東京や大阪の都市部でのデータを見ると、最高気温が30℃を下回っている日でも、糖尿病群では30代・60代の熱中症発症率が有意に高まっていました。
これは糖尿病患者の体が中程度の暑さにさえうまく対応できない可能性を示しています。
また、北海道のような寒冷地域では、40~59歳の糖尿病患者でリスクが約2倍に。
寒い地域なら熱中症にはなりにくいと思われがちですが、冷房設備が十分でなかったり、暑熱に慣れていない(暑熱順化が不十分)といった要因が重なると、むしろ危険が高まるのです。
つまり「暑い地域だから危ない」「高齢者だけがリスク」──そんな従来の思い込みは、もはや通用しません。
この結果は、熱中症対策が高齢者中心に語られがちだった日本社会に新たな視点を突きつけているのです。

私たちは今、気候変動の影響で年々暑さが厳しくなる時代を生きています。
この研究は、そんな時代において、糖尿病という「基礎疾患」が日常的な暑さにさえ危険を増すという現実を突きつけています。
特に、働き盛りの男性や、北海道など寒冷地に暮らす人々、そして「まだ若いから大丈夫」と思っている糖尿病患者は、油断せず、気温が30℃に達しなくても早めの対策を取ることが重要です。
冷房の活用、水分補給、衣類の工夫、外出時間の調整。
熱中症対策は、高齢者だけの問題ではなく、「糖尿病を持つすべての世代」にとって必要不可欠なものとなるでしょう。