わずか2週間前には、その存在すら誰も知らなかった。サイケデリック・ロックを奏でるバンド「The Velvet Sundown」。彼らは突如として音楽シーンに現れ、あっという間にSpotifyで月間50万人以上のリスナーを獲得するという快挙を成し遂げた。

 まるで何十年も活動してきたかのような創作意欲で、すでに2枚のアルバムをリリース。さらに3枚目のアルバムも間もなくだという。この異常なまでの活動ペースと人気は、彼らがただ者ではないことを示唆していた。そう、彼らは我々が知る「バンド」のルールで戦っているわけではなかったのだ。

早すぎる成功が呼んだ「AI疑惑」

 この驚異的なスピードでの成功と、記録破りのアルバムリリース。音楽ファンの間で話題になるのと同時に、「これはAIが作ったギミック(仕掛け)ではないか?」という疑惑が瞬く間に広がった。 そして、その疑惑を裏付けるかのような兆候が次々と見つかる。

 まず、バンドのInstagramに投稿されたメンバーの写真は、どう見てもAIで生成されたような不自然さがあった。さらに、メンバーとされるゲイブ・ファロー、レニー・ウェスト、ミロ・レインズ、オリオン・“リオ”・デル・マーといった名前は、先月末に作られたばかりのバンドの公式アカウント以外、どこを検索してもその存在を確認できない。

 決定打となったのは、別の音楽配信サービスDeezerに掲載された注意書きだ。

「このアルバムの一部の楽曲は、人工知能を使用して作成された可能性があります」

 疑惑が確信に変わる中、ついにプロジェクトの運営チームが重い口を開き、真相を認めたのである。

「これはトリックではない」運営が語る真の目的

 物議を醸したこのプロジェクトについて、運営チームは「The Velvet SundownはAI生成バンドである」と正式に認めた。バンドの公式プロフィールは、今やこう書き換えられている。

「The Velvet Sundownは、人間の創造的な指導のもと、AIの支援を受けて作曲、歌唱、視覚化された合成音楽プロジェクトである」

 彼らは続ける。「これはトリック(ごまかし)ではない。鏡なのだ」と。このプロジェクトは、AI時代における「作者とは誰か」「アイデンティティとは何か」、そして「音楽の未来そのもの」の境界線に挑戦するために設計された、現在進行形の芸術的な挑発なのだという。

 メンバーのキャラクター、物語、音楽、歌声、そして歌詞。そのすべてが、創造的な楽器として使われるAIツールの支援を受けて生み出されたオリジナル作品。実在の人物や出来事との類似は、すべて偶然であると宣言している。

結成2週間でヒット曲連発、Spotifyで50万人を熱狂させた新人バンドの意外な正体の画像2
(画像=画像は「Oddity Central」より)