スピードと臨機応変な対応が重要
では、日本の事業者側としては、増加が見込まれる中東諸国からの訪日客を取り込んでいくためには、どのような施策・対応をすればよいのか。
「中東・湾岸諸国は、今後の伸びしろと消費額の大きさでは非常に魅力的な市場と言えます。しかしその一方で、日本側で提供される商品・サービスや接遇のあり方が彼らのニーズと合っておらず、誘客に結び付いていないことも少なくありません。特に食事面においては、ハラール対応が実状以上に厳しく困難なものとして捉えられている場合が多く、本来であれば少しの調整で十分満足されるケースであっても、受け入れを過度に難しいと判断され、機会を逃してしまうことがあります。
近年では、初来日でもゴールデンルートに限らず地方への訪問を希望される旅行者も増えてきています。しかし、例えば旅館においては洋朝食のご提供が難しければ滞在が難しく、近隣で他の宿泊施設が見つからない場合は、その地域への訪問自体を諦めるといった、非常に惜しいケースも見受けられます。
また、日本の観光事業者においては『あれも知ってほしい』『これも体験してほしい』と、中東の旅行者にとっては過剰に感じられるほど、多くの要素を説明や観光コンテンツに詰め込みすぎてしまう傾向も見られます。さらに、貸切など特別対応が難しかったり、確認に時間を要して返答が遅れたりすることで失注に至るケースも少なくありません。この市場では、スピードと臨機応変さ非常に重要であるため、それを意識した対応が求められます」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=金馬あゆみ/ジェイ・リンクス代表)