しかしながら、スーパーマンが「保守的な愛国者」の理想であり続けたかというと、そんなことはないらしい。

BBCに専門家が語ったところによれば、1938年のデビュー当初は「スーパー・アナーキスト」で「暴力的な社会主義者」、「左翼革命家」でさえあった。

背景には、原作者シーゲル&シュスターがユダヤ移民の貧しい家庭出身だったことや、コミック業界自体が「まともな職に就けなかった」才能たちの「クリエイティブ・ゲットー」だった歴史もある。

スーパーマンは「虐げられた者のチャンピオン」として誕生し、急進的なヒーローだった。しかし人気が出すぎて「平凡化」の道をたどる。戦争の時代には体制寄りの愛国者に“転職”せざるを得なかった。「Pulp Empire: A Secret History of Comic Book Imperialism」の著者、ポール・S・ヒルシュ氏は「コミック業界で働く移民や有色人種は皆、愛国心があると思われたかった。社会に溶け込むためにはそうするしかなかった」と指摘する。

時代に合わせて姿を変えるスーパーマン。新作では一体どんな“正義”を見せてくるのか。「絶対観ない!」と叫ぶ人々。実は一番気になっているのは自分たちだったりして。