事業活動においては、商品を仕入れて販売するにしろ、原材料を加工して商品を製造し、それを販売するにしろ、必ず資金の支出が先行し、それが回収されるまでの期間、資金は外部に流出しているから、運転資金を調達しなければならない。
経営効率からいえば、調達すべき必資金額は小さいほうがいい。運転資金を小さくするには、原材料在庫や製品在庫を圧縮すればいい。しかし、在庫を圧縮すれば、事故等によって物流が一時的に断絶するとき、容易に事業活動の中断が生じる。故に、在庫の余裕は不可欠である。
現金の保有を小さくすれば、運転資金の調達を少なくできる。しかし、事業には不確実性があるから、入金が遅延して、支払いのできなくなる可能性がある。故に、余裕資金の保有は不可欠だと考えられやすい。しかし、余裕は、即ち、無駄である。故に、常に、余裕資金の最小化は、常に、志向されなければならない。

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さて、負債には必ず期日があり、期日には現金による弁済がなされる。余裕資金の最小化がなされていれば、弁済に必要な資金は、多くの場合、別の使途に使用されていて、手元の現金だけでは、弁済不能になる可能性がある。そこで、資金調達を先行させて、その資金で弁済するという無駄が生じるわけである。
この無駄を省いたのがタンコロである。手形貸付においては、債務者を振出人、債権者を受取人とする約束手形が担保にされるが、この手形は、債務者が一名の単名手形なので、略して単名と呼ばれる。手形貸付が便利なのは、現金による弁済が省略されて、手形の期日、即ち、融資の弁済期日が到来するごとに、期日を書替えて、弁済が常に先に繰り延べられることである。この書替は、俗に、転がしと呼ばれていて、タンコロとは、単名の転がしの略なのである。
タンコロは、過小資本の事業者に適用されることが多いために、問題性を指摘されるが、一定の資本の厚みのある事業者については、むしろ、タンコロのように現金による弁済を省略できる仕組みが工夫されるべきである。また、現金による弁済には金融規律の維持という側面があるので、タンコロは不健全だという見解もある。実際に、与信判断の更新も省略されて、漫然と書替がなされる可能性もあるが、それは運用の問題にすぎないことである。