他者からの束縛を受けず、自身の思うままに振る舞えるのが自由。X上では、この「自由」が失われた空間に対し、驚きの声が上がっていたのをご存知だろうか。

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■上野駅で「衝撃の2文字」を発見

ことの発端は、画家・真田将太朗氏が6月10日に投稿した1件のポスト。

「今日の上野駅のスタンス憧れる」と意味深な1文の綴られた投稿には、JR上野駅・中央改札にて撮影された写真が添えられている。電光掲示板(発車標)が写った、一見するとなんの変哲もない光景だが…。

よく見ると、工事の現場シートで覆われた壁付近に、大きく「『自由』を修復しています」と記された幕が設置されていたのだ。

■「今の上野に自由は無いのか…」

「自由を修復」というパワーワードは瞬く間に話題となり、件のポストは投稿から数日足らずで6,000件近くものリポストを記録。

Xユーザーからは「なんかディストピア感あるな」「まさか、ここで自由が修復されていたとは」「今の上野に自由は無いのか…」「近代のフランスかよ」といったツッコミが多数寄せられていた。

「自由」を修復しています
(画像=『Sirabee』より引用)

そこで今回は『自由』の正体をめぐり、上野駅を運営する東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に詳しい話を聞いてみることに…。

■そもそも『自由』って何だ?

JR東日本に話を聞くと、今回話題となった『自由』は、上野駅中央改札口の壁に大きく描かれた、画家・猪熊弦一郎による1951年(昭和26年)の作品名であると明らかになった。

『自由』
(画像=『Sirabee』より引用)

馬に乗った男性、両手で大きな魚を持った女性、仲良く顔を突き合わせる2匹の犬、スキー板を持った男女…など、様々なシチュエーションの人々が描かれた、正に「自由」な作品と言える。

JR東日本の担当者は「『丸亀市猪熊弦一郎現代美術館』によると、当時の国鉄がある青年から、戦後の上野駅の暗いイメージを変えることを目的に、広告壁画の制作を提案され、その提案を受けて制作されたと聞いています」と、説明していた。

また、担当者は「美術館によると、東北や北陸方面の列車が発着する『東京の北の玄関口』にちなみ、猪熊はリンゴや秋田犬といった北国の風物をモチーフに選んだそうです」とも補足している。

「昭和20年代の上野駅」と聞いて、東北地方から列車でやって来た「集団就職」の若者たちを連想した読者もいることだろう。心細い思いで東京にやって来た若者たちの中には、同作を見て遠い故郷を思い出し、勇気づけられた人がいることは想像に難くない。

そんな作品『自由』の修復期間は、6月2日から2025年度末を予定している。完了した暁には、ぜひ生まれ変わった「自由」感じてみてほしい。