運動、特にスポーツの世界では単純な「走る力」や「技術」だけでは勝てません。

例えば、バスケットやサッカーのような流動的な競技では、「次に何が起きるか」を瞬時に読み取る判断力が、勝敗を分けるカギとなります。

ところが長時間にわたる認知的な集中は脳を疲れさせ、運動中の判断力を著しく低下させてしまうことがあります(=認知疲労)。

こうした見えない疲労を、わずか2錠のカプセルで克服できるとしたら——?

そんな夢のような効果が、カカオに含まれる天然成分「フラバノール」にあることが、早稲田大学の最新研究で明らかになりました。

研究の詳細は2025年6月10日付で科学雑誌『Psychopharmacology』に掲載されています。

目次

  • カカオパワーで判断力を維持
  • 天然の力で勝負を変える? カカオサプリが切り開く未来

カカオパワーで判断力を維持

早稲田大学と立命館大学の研究チームは今回、ココアに豊富に含まれる「フラバノール」という成分が、運動中の判断力を高める効果を持つことを明らかにしました。

そもそも、バスケットやサッカーを含む流動的な競技では、選手は走るだけでなく、つねに周囲の状況を観察し、最適な行動を選び続けなければなりません。

このとき発生するのが「認知疲労」と呼ばれる脳の疲れです。

認知疲労がたまると、注意力が落ち、判断の正確性やスピードが低下してしまうのです。

チームはこの問題に対し、カカオ由来の天然成分「ココアフラバノール」に注目しました。

以前の研究で、この成分には抗酸化作用や血流促進効果があることが知られており、さらに精神的疲労感を和らげる可能性も指摘されていました。

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Credit: canva

今回の実験では、被験者に認知疲労を50分かけて人工的に誘導し、その後、有酸素運動中に判断力(反応速度と精度)を測定するという方法がとられました。

被験者には運動の1時間前に「高用量フラバノール(500mg)」入りカプセルか、「低用量」カプセルのいずれかを摂取させるという手法が用いられました。