専門家も驚嘆するその価値とは

「NWA 16788は並外れた重要性を持つ発見です。地球上で見つかった最大の火星隕石であり、オークション史上、最も価値のあるものとなるでしょう」。サザビーズの副会長、カサンドラ・ハットン氏はそう語る。

 彼女はさらに、「宇宙と時間の旅を経て風化したこの隕石は、その巨大さと紛れもない赤い色で、歴史的な発見として際立っています。この驚くべき隕石は、古くから人類の想像力をかき立ててきた隣の惑星、火星との具体的なつながりを与えてくれるのです」と続けた。

 これほどまでに高い価値がつけられるのは、その圧倒的な希少性と、人類が抱き続けてきた火星へのロマンを物理的に感じさせてくれる存在だからに他ならない。

最高落札額は6億円!?「史上最大の火星隕石」世界が固唾をのむ歴史的オークションが始まる…!の画像3
(画像=画像はUnsplashのJavier Mirandaより)

誰の手に渡るのか?科学界の懸念と未来

 一方で、このような貴重な天体が個人に売却されることには懸念の声も上がっている。もし個人のコレクションに収まってしまえば、科学者たちが研究する機会や、一般の人々がその姿を見て感動する機会が永遠に失われてしまうかもしれないからだ。

 昨年、史上最高額で落札されたステゴサウルスの化石「Apex」をめぐっても同様の議論が巻き起こったが、幸いなことに化石はアメリカ自然史博物館に永久貸与されることになった。

 今回の隕石については、幸いにも参照用のサンプルが中国の紫金山天文台に保管されており、科学的な研究の道は閉ざされていない。また、これまでにもイタリア宇宙機関などで公開されてきたほか、オークション直前の7月8日から15日までは、ニューヨークのサザビーズで一般公開される予定だ。

 予想落札価格は、200万ドルから400万ドル(約2億8800万円〜5億7600万円)。この火星からの使者が最終的にいくらの値をつけ、どのような所有者のもとへ渡るのか。そして、再び私たちの前に姿を現す機会はあるのだろうか。オークションの槌が振り下ろされるその瞬間まで、世界中のコレクターや宇宙ファンが固唾を飲んで見守っている。

参考:IFLScience、ほか

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