「記憶の正体」はいまだ謎—残された大きな壁

 40%という驚くべき可能性が示された一方で、この調査は、我々が「記憶」というものの本質をまだほとんど理解していないという事実も浮き彫りにした。

 記憶が物理的に存在することは、ほぼ間違いない。しかし、その記憶を正確に読み出すためには、「どの部分」を「どれくらいの解像度で」スキャンすればいいのか。原子レベルの分子構造まで必要なのか、それとも細胞内の構造レベルで十分なのか。この点については専門家の間でも全く意見がまとまらなかったのだ。

 我々が「記憶」と呼んでいるものが、一体どのような形で脳に刻まれているのか。その根本的な謎が解明されない限り、「記憶のダウンロード」は絵に描いた餅のままだ。

 それでも、脳科学者たちがこのSFのような問いに40%という決して低くない数字を提示したという事実は、我々の未来観を静かに揺さぶる。

 あなたの記憶が100年後のスーパーコンピューターの中で再び再生される日が来る。そんな未来をあなたは望むだろうか。

参考:Gizmodo、ほか

文=深森慎太郎

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