「音喜多は新サイバー犯罪条約をどう考えているんだ?」
というご質問を複数いただいています。結論から申し上げると、私は『留保なし批准』には明確に反対です。
新サイバー犯罪条約は、国際的なサイバー犯罪対策を強化する枠組みです。確かに悪質なハッキングや詐欺、児童への虐待といった犯罪行為は、国境を越えて取り締まる必要があります。
しかし、元々この条約作成にはロシア等が積極的で、欧米諸国からは人権侵害の懸念が示されていました。
その後、調整の結果草案ができあがり、日本は草案作成の副議長を務めてきました。そのため、批准自体を拒むのは難しい状況です。
ただし、表現の自由との関係で問題となっているのが「オンライン上の児童の性的虐待または児童の性的搾取資料に関連する犯罪」の部分です。もちろん、子どもたちに対する虐待、搾取は性的なものに限らず根絶すべきです。
問題は、創作物の中の描写にまで規制が入る点。
18歳未満の性行為描写も対象となる危険があります。被害者の存在しない創作物であってもです。
文学作品の中には、真摯な恋愛の末に未成年の性行為描写がなされるものも少なくありません。また、児童虐待の非道さを訴える物語の中で一定の性虐待の描写がなされることもあります。
そうしたものまで規制の対象になる危険があり、現代の創作物だけに留まらず、過去の名作文学や芸術作品にまで影響を及ぼすリスクを孕んでいます。
幸い、この条約は留保付きで批准することができます。非実在描写を対象から除くという限定が可能なはずであり、ここを押さえておかないと取り返しがつかなくなります。
私は都議時代から、青少年健全育成条例や不健全図書の取り扱いを巡り、「表現の自由」を守るために一貫して戦ってきました。大阪府における「有害図書」の名称変更においても、結果を出してきた自負があります。
表現は文化の礎であり、未来への財産です。一度規制の網がかけられれば、それを取り除くのは容易ではありません。