なぜ我々は「壮大な嘘」に騙されるのか

 この一連の騒動は、一体何だったのか。ウェイクフォレスト大学の心理学者、ジョン・ペトロチェリ教授は、「人々は“でたらめ”を見抜くのが恐ろしく下手だ」と指摘する。

 ブラウンの物語は、事実(シャスタ山周辺には洞窟がある)と、人々が信じたい願望(財宝、レムリア伝説、巨人)を巧みに混ぜ合わせた、「真実に近い嘘」だった。だからこそ、多くの人々がそれを信じてしまったのだ。人々は人を感動させたり、説得したりするため、あるいは自らの価値観を補強するために物語を作り上げる。ブラウンもまた、人々を惹きつける物語の力を知っていたのかもしれない。

 映画『インディ・ジョーンズ』が人々を魅了するように、私たちは本能的に宝探しや冒険譚が好きだ。J.C.ブラウンの正体も、トンネルの真偽も、今となっては確かめようがない。しかし、この謎に満ちた物語が90年近く経った今もなお語り継がれているのは、それが私たちの心の奥底に眠る冒険心とロマンを、今も激しく揺さぶるからなのだろう。

参考:SFGATE、ほか

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