使いやすく、誤動作が生じないようにすることが普及のカギ

 日本であまり普及していない理由は何なのか。

「日本のメーカーは安全を非常に重視しており、ハンズオフで走行している車で事故が起きるとブランドが大きく棄損するので、交通状況が複雑な一般道での実用化には慎重な姿勢です。一方、中国は最新技術をめぐる競争が激しく、さらに消費者が新しい技術に比較的寛容な傾向があるため、普及が進んでいる面はあるかもしれません。ただ、先日、中国小米(シャオミ)のEVでNOAを動作中に高速道路で死亡事故が起き、中国の当局が規制を強める可能性も出てきました。NOAでは先ほども触れたように、ドライバーはシステムの動作状況を監視する義務があるのですが、メーカーが先進装備の搭載を競うあまり、そうしたことをユーザーにきちんと周知徹底してこなかったのではないかという空気が強まっています」(鶴原氏)

 今後、日本でハンズオフ搭載機能の車が広く普及する可能性はあるのか。

「例えば日産は自動運転技術のベンチャー企業である英ウェイブ・テクノロジーズと協力して都市部でもハンズオフ機能を実現するADAS(運転支援機能)を2027年から実用化すると発表しています。同様にホンダも27年に都市部でハンドオフ運転ができるような運転支援機能を搭載する車を投入すると発表しています。そのためには、高い性能を持ちつつ消費電力を抑えた半導体を開発していく必要があるでしょう。また、一般道での運転支援機能を実現するには『三種の神器』として、カメラ、ミリ波レーダー、ライダー(レーザー光線を使ったセンサー)が必要と言われていますが、レーザー光線を使ったセンサーのコストが現状ではまだ高いのが過大になっています。

 ただホンダは、できるだけコストを抑えて小型車クラスにもハンズオフ機能を搭載したいと説明しており、ライダーを搭載しない方向で検討しているようです。もし普及価格帯の車にも搭載されるようになれば、普及が進む可能性があります。

 ハンズオフ機能のような運転支援技術が、高齢ドライバーによる事故の削減につながれば普及の意義は大きいといえます。ただ、現在の運転支援機能は操作が簡単とはいえず、高齢者が十分活用しているとは言い難いと感じます。使いやすく、かつ誤動作が生じないようにすることが普及のためには欠かせないと思います」(鶴原氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=鶴原吉郎/オートインサイト代表)