●この記事のポイント ・インターネット上でライブ配信を行い、ECや店舗での売上増につなげるライブコマースが活性化 ・UNIQLO LIVE STATIONの2024年の年間視聴者数は約1500万人に増加 ・ニトリLIVEは配信1回あたりの平均視聴者数が約2万人
インターネット上でライブ配信を行い、ECや店舗での売上増につなげるライブコマースが活性化している。手掛ける大手企業も増えており、例えばユニクロは2020年から「UNIQLO LIVE STATION」を開始。ニトリは22年から「ニトリLIVE」を、楽天グループは21年から「楽天市場ショッピングチャンネル」を運営している。店舗スタッフが出演して店舗から配信したり、社内部署の社員が出演したりと企画内容や形態はさまざまだが、ニトリLIVEは配信1回あたりの平均視聴者数が約2万人にも上り、売上増に一定の効果が出ているという。多くの企業が今、ライブコマースに注力している背景・狙いは何か。また、ライブコマースによって、どのような効果が生じているのか。手掛けている企業への取材をもとに追ってみたい。
●目次
スタッフの接客の質やモチベーションの向上も
ライブコマースは2010年代後半頃から中国で市場が拡大したとされ、日本でもメルカリなどが開始(メルカリはすでに終了)。日本で一気に広がる契機になったのが、コロナ禍によるリアル店舗の来客数減とEC利用の増大であり、参入する企業が相次いだ。ライブコマースで配信される内容はさまざまで、自社商品の紹介に限らず、部署や社員の取り組みにクローズアップしたり、会社の秘密を明かしたりと、直接的なEC売上アップだけではなくブランドのファンを増やしたり、店舗への来店のきっかけづくりが目的となっているケースも多い。
毎週金曜日夜に「UNIQLO LIVE STATION」を配信しているユニクロのLIVE STATIONチームのリーダー、清水氏はいう。
「弊社がUNIQLO LIVE STATIONを開始したのは20年12月ですが、当初はコロナ禍の真っただなかで店舗に行くことが難しく、家にいながら知りたい情報を得てお買い物ができるという新しい購買体験をご提供するという目的で、スタートさせていただきました。動画コンテンツが“見られるメディア”になってきていたこともあり、タイミングとしては合っていたかなと思っております。現在は消費者との双方向のコミュニケーションが重要になっており、我々から一方的に情報を発信するのではなくて、ライブ配信中にお客様からいただくコメントや質問に対して、その場で答えて納得していただき、ファンになっていただくということを重視しています」
UNIQLO LIVE STATIONの2024年の年間視聴者数は約1500万人であり、23年の約1000万人から大幅に増加している。24年の夏からはTikTokやYouTubeなどでも配信するといった取り組みの効果が出ているという。
UNIQLO LIVE STATIONが売上に与えた影響に関する数値は公表されていないが、同社の24年9月~25年2月の国内ユニクロ事業におけるEC売上高は前年同期比10.9%増と伸びている。ライブコマース実施によって、どのような効果が出ているのか。
「私どもはお客様からの声をもとに商品を開発しておりますが、UNIQLO LIVE STATIONに携わるスタッフがお客様のお悩みを解決するような企画を考えたり、商品をつくっている部署にヒアリングしながら新しい企画を考えたりするなかで、いろいろな部署の人と接することによって自身の商品知識を増やしたり、出演する販売スタッフも知識が増えることで、接客の質やモチベーションを向上させることができるという点は良い効果だと考えております。
先ほどもお伝えさせていただきましたとおり、UNIQLO LIVE STATIONではお客様との双方向のコミュニケーションを重視しているため、台本などの事前準備をしつつも、その場で臨機応変に対応していくことで、お客様の声をもとに予定と実際の配信内容が変わることも珍しくないですが、結果的にお客様のご要望にできるだけお答えすることでご満足いただいている部分はあると考えております。
ユニクロという会社や商品の紹介だけで終わるのではなく、お客様のリアルな反応を見つつベストな内容は何なのかを模索し、視聴者の方々が動画を見て“ほっこり”した気分になっていただけるように、もしくは『ユニクロがつくっている番組って、なんか楽しいよね』『配信が楽しみ』と感じていただけるようにチャレンジしていきたいと考えております」