LLM、性能的にはもう十分といえるレベル?
LLMの性能がユーザー側にとって十分といえるほど高い水準になりつつあることも背景にはあるという。
「汎用的な言語モデルを使うというのはこれは一見矛盾しているようですが、BtoC、つまり一般ユーザーが求めているものです。BtoC型ではLLMが求められ、BtoB型ではSLMが求められるという流れです。つまり一般ユーザー向けには大規模言語モデルは検索エンジンの代替となることが求められつつあり、一方で、特定のサービスを提供する企業は特定の用途に限定した高品質な会話を求めており、個々のユーザー向けの限定したサービスを提供するには小規模言語モデルが必要だという認識が広まっています。これまでは言語モデルは、とりあえず大きくなるのがいいことだという方向で進んできましたが、性能的にはもう十分といえるレベルなので、これ以上の大規模化は、企業的なニーズと距離ができつつあります。
NTTの『tsuzumi』は早い時期に開発された小規模モデルを含む大規模言語モデルの一つですが、そのような小規模言語モデルの要求は徐々に発掘されつつあります。大規模言語モデルも既に大規模であることがセールスポイントである時期は過ぎて、1人1エージェントの時代には、よりパーソナライズされた会話、個人向けのエージェント記憶が必要とされています。ただ誤解して欲しくないのは、大規模言語モデルがなくなったり、ユーザーが減少するという意味ではなく、大規模言語モデルの一つのサービスの形として小規模言語モデルがラインナップに加わっていく、または、小規模で特徴を持った特定の会話サービスの市場がそれなりに拓けてくるだろう、ということです」(三宅氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=三宅陽一郎/AI開発者、東京大学生産技術研究所特任教授)