大阪総領事の無駄口
イスラエルとイランの戦闘が激しさを増していた6月14日、中国の薛剑大阪総領事は、ナチス時代のドイツ国旗とイスラエルの国旗を並べ、ナチスは「ユダヤ人を虐殺」し、イスラエルの「ユダヤ人が虐殺」を進行させているとX(旧ツイッター)に投稿した。
これを受けて、イスラエルのコーヘン駐日大使は同月19日、「恥ずべき行為であるだけでなく、反ユダヤ主義的で危険であり、かつホロコーストの記憶に対する侮辱だ」と薛剑大阪総領事を非難し、「日本で反ユダヤ主義や扇動行為が許されるべきではない」と主張した。
だが薛剑大阪総領事の目的は、イスラエルとアメリカを憤慨させることではなく、日本国内で反イスラエルのフィルターを通した反米感情を刺激しようとしたのはまちがいない。イスラエルとアメリカを挑発したいなら、日本語ではなく英語でのみ投稿するはずだ。
つまり日本人の価値観や思考に影響を与え、判断を左右し、行動をコントロールしようとしている。この無駄口もまた認知戦の一環なのだ。
薛剑大阪総領事は以前から、「全国どこからでも、比例代表の投票用紙には『れいわ』とお書きください」とXに投稿するなど内政への干渉を続けている。これもまたれいわ新選組への投票を呼びかける以上に、れいわ新撰組支持の風潮を醸し出したり、同党支持者を自らに引き付ける目的で行われたのではないか。あるいは反れいわ新撰組の人々を挑発して世論を紛糾させたかったのかもしれない。
認知戦の多様性
認知戦とは、前述したように価値観や思考に影響を与え、判断を左右し、行動をコントロールするための、感情や考え方に働きかける戦術だ。たとえば原発事故にまつわる処理水放出について、中国が国営報道機関で「高濃度の汚染水が排出される」と伝え、これが中国国内だけでなく日本の世論に影響を与えた出来事が記憶に新しい。
このとき誤った情報は次のように生まれ、流布され、影響を及ぼした。