「ストレスが溜まってくると、なぜか衝動的な買い物をしてしまう」
「冷静になれば絶対しない決断を、勢いでやってしまった」
こんな経験はありませんか?
米アーカンソー大学(University of Arkansas)の最新研究で、私たちがストレス下でリスクの高い行動をとりやすくなる理由が、ようやく科学的に明らかになってきました。
どうやら、ストレスによって“損を避けたい”という本能的な防御反応が弱まってしまうようなのです。
しかもその傾向には、男女である違いがあることも判明しました。
研究の詳細は2025年2月の学術誌『Psychoneuroendocrinology』に掲載されています。
目次
- ストレスが“損を恐れなく”させるメカニズム
- ストレスへの反応、男女でこんなに違う?
ストレスが“損を恐れなく”させるメカニズム

アーカンソー大学の研究チームが行った実験では、147名の成人を対象に、ストレスを与えた状態とそうでない状態で、仮想的な金銭判断タスクに取り組んでもらいました。
分析には「累積見込み理論」と呼ばれる行動経済学の手法が用いられました。
この理論は、人が意思決定をする際に働く心理的要素を以下の4つに分類します。
・損失回避傾向(損することをとても嫌う傾向)
・リスク回避傾向(不確実性を避けたがる)
・選択のゆらぎ(決断の一貫性のなさ)
・確率のゆがみ(ありふれた確率を過小評価し、低い確率を過大評価してしまう)
特に注目されたのが「損失回避傾向」の変化です。
通常、人は100ドルを得る喜びよりも、100ドルを失う苦しみのほうを強く感じるため、「損を避けたい」という思考が働きます。
ところが実験の結果、ストレス状態に置かれた被験者では、この「損を恐れる力」が男女ともに顕著に弱まっていたのです。
つまり、ストレスを感じると「やばいかもしれないけど、まあいっか」と思ってしまいやすくなるのです。