その地域のニーズに根ざした運営体制を尊重

 海外展開においては、独自の取り組みを推進しているという。

「当社では、海外展開にあたって一律のモデルを適用するのではなく、各市場の成熟度や外食文化の違いに応じて、当社の強みである業態開発力を活かし、現地に適した新たなブランドを開発していくという柔軟な戦略を採用しています。一方、すでに強いオペレーション力やブランド力を持つ現地企業と提携・M&Aを行う場合には、現地企業の運営体制を尊重し、その経営陣に一定の裁量を持たせる形をとっています。いずれのケースでも、日本的な品質管理や理念浸透の仕組みは共通して展開しつつ、現地のお客様に愛されるブランド展開を志向している点が、当社ならではの特徴と考えています」

 今後の海外事業拡大に向けた計画・戦略について聞いた。

「海外市場において『日本食』は一定の認知はあるものの、現地マーケット全体から見ればニッチなポジションにあると認識しています。そのため、単に国内業態を海外に持ち込むのではなく、現地ニーズに即した業態開発や、既存ブランドとのM&Aを軸とした展開が基本方針となります。エリアとしては、現在『中華圏』『東南アジアを中心としたアジア全域』『北米』の3エリアに戦略を区分し、それぞれの市場特性に応じたポジショニングと出店方法を検討中です。たとえば北米では既存ブランドの買収を通じた展開を進めており、アジア圏では当社主導のブランド開発を行っています。今後の出店目標や具体施策については、各エリアでの足場を固めながら段階的に拡大していく考えです」

 将来的に全売上のうち海外事業の売上をどれくらいの比率まで高める予定なのか。

「現在は国内が売上高の大部分を占めておりますが、2030年までに全体の10%を海外事業で構成することを目標としています。中長期的には、海外における収益構造の多角化や、ブランド認知度の拡大も見据えており、単なる出店数の増加にとどまらず、現地に根差した持続可能な収益モデルの確立を重視しています」

 気になるのは、焼肉食べ放題業態である「焼肉きんぐ」を海外で展開する予定はあるのかという点だ。

「『焼肉きんぐ』については、現時点では海外展開の具体的な計画はございません。ただし、焼肉業態そのものへの関心は高く、今後市場環境が整ったタイミングで、現地に適したかたちでの展開可能性は引き続き検討してまいります」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)