クラフトンがADKHDを買収する目的
では、クラフトンがADKHDを買収する目的は何なのか。また、ADKHDが買収を受け入れる目的は何なのか。
「クラフトンがADKHDを買収する目的は、あくまで推察ですが、ADKが保有するアニメのIPや企画制作力、日本のアニメ業界に広くリーチできる機会が魅力に映ったのではないでしょうか。
一方、ADKの株を持っているのはベインなので、今回の買収についてはADK側が受け入れる意思を持つのかどうかは関係ありません。中小企業のM&Aであれば買収後にキーマンが全員辞めたりすれば大変なので、買い手も売り手も慎重になって確認しながら動きますが、ここまでの大企業になると組織で動いていますので『ADKの従業員から反発されたらどうしよう』といったことは考慮されません。広告代理店という事業は人が全てなので、海外企業が買収してPMIをきちんとやっていくのは相当大変だと思います。もっとも、それは買い手側の課題であって、ベインがADK株を売却を判断する上では関係ありません」(中沢氏)
ADKHDにも海外ビジネス拡大のメリット
ADKHDの主な事業は広告・マーケティング事業だが、アニメ・コンテンツ事業にも強みを持つ。『ドラえもん」『クレヨンしんちゃん」『プリキュア」『遊戯王』シリーズなど数多くのアニメ制作委員会に参加しており、アニメの制作・マーケティングのノウハウを持つ。また、多くのIPを活用する権利を持つとみられる。クラフトンがADKHDを買収する目的は何か。
「クラフトンとしては、自社ゲームタイトルを日本でアニメ化や映画化して展開するというよりは、日本のアニメなどさまざまなIPをゲームに活用することによって海外展開を進めていきたいという戦略だとみられる。ADKHDがすでに権利を持っているIPはすぐに使えるだろうし、その他のADKHDが直接的に権利を持っていないIPも、日本の大手広告代理店であるADKHDが窓口となって権利保有者である各企業と交渉してくれれば“話がスムーズに進む”と期待できる。加えて、ADKHDのノウハウやコンテンツ企業との接点を活かして、クラフトンは自社のIPに加えて日本のIPを活かしたアニメ・コンテンツの制作とその海外展開を進めることも可能になってくる」
一方、ADKHDは1月に米国企業(STAGWELL)と海外事業に関する協業を発表するなど海外展開に力を入れており、アジアをはじめ海外でもシェアを拡大させつつあるクラフトンを通じて、ビジネスを拡大させることが期待できるので、大きなメリットがあると予想される」(大手ゲーム会社関係者)
ADKHDは今回の発表に際し、「グローバルIP企業であるKRAFTONという戦略的パートナーを得たことにより、中期経営計画の中心に置くファングロース戦略の取り組みを加速させてまいります。ADKグループの広告・マーケティング事業や、特徴であるアニメ・コンテンツ事業と、KRAFTONの有するグローバルIPやネットワーク、テクノロジーおよび資金力等を活かし、お互いのユニークネスを最大限活用した持続的成長が期待できると考えています」としている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=中沢光昭/リヴァイタライゼーション代表、志摩力男/トレーダー)