「エンジンの鼓動をダイレクトに感じ、自らの手でギアを操る」というマニュアルトランスミッション(MT)の車には、オートマチックトランスミッション(AT)車では味わえない操る楽しさが凝縮されています。9割以上がAT車となった現代においても、熱狂的な愛好家から根強い支持を得ているのもそのためでしょう。
しかし、MT車ならではの「喜び」がある一方で、MT車特有の「悩み」も尽きません。特に、日本の過酷な夏には、MT乗りだけが直面する「あるある」な問題が多々発生すると言います。
今回は、長年MT車を愛し続けるベテランドライバーたちに、夏のMT車にまつわる苦悩を聞いてみました。
灼熱のシフトノブ!憧れのチタンはカッコいいけど…

MT車の運転で最も頻繁に触れるパーツといえば、やはりシフトノブです。操作感を追求して、純正品から社外品に交換しているMT乗りも少なくありません。
特に人気なのが、アルミやチタンなどの金属製シフトノブです。見た目のクールさやカチッとした操作感が魅力ですが、これが夏のMT車ドライバーにとって思わぬ「敵」となることがあります。
炎天下に長時間駐車したMT車に乗り込む際、熱を帯びた金属製シフトノブを握ろうとして、思わず手を引っ込めてしまうほどの熱さになっている、という経験談は枚挙にいとまがありません。まさに「火傷しそう」なレベルです。
この灼熱のシフトノブへの対策として、MT乗りたちは様々な工夫を凝らしているようです。
- 「夏場だけ別の素材のノブに交換する」
- 「駐車中にタオルや布を巻いておく」
- 「シフトチェンジのスピードを極限まで上げて、触る時間を短縮する」
さらに、ユニークな対策を講じる方もいました。
「ゴルフをするので、夏場は左手にゴルフグローブをして運転しています。熱さを感じませんし、滑りにくいので気に入っていますよ。同乗者からは『ダサい』と大不評ですが……」(40代男性)
運転用にレーシンググローブを着用する手もありますが、レーシンググローブはなかなかのお値段。シフトノブの熱さ対策のためだけに、わざわざコストをかけたくないという考えももっともです。同乗者の目を気にしないのであれば、「今あるもので代用する」という発想は非常に有効な策と言えるかもしれませんね。
「涼しさ」と「気持ちよさ」…優先したいのはどっち?

うだるような日本の夏を快適にドライブするには、カーエアコンはもはや必須装備です。しかし、「走り」を何よりも重視するMT乗りの中には、エアコンの使用による「パワーロス」を嫌うドライバーも少なくありません。
「古いシビックに乗っているのですが、エアコンを使うとあからさまにパワーが落ちて、上り坂でかなりパワー不足を感じるんですよ。なので夏場に山道を走る時は、エアコンをいつもオフにしています。当然蒸し暑くはなりますが、それよりも『ストレスなく走りたい』という気持ちの方が強いですね。もちろん人を乗せる時はエアコンをつけますが、大学の頃の合宿で、2人乗せた時に全然坂を上らなかったので仕方なくエアコンを切ったことがあって、その時は大ブーイングを喰らいましたね。狭い車内に男3人でサウナ状態でした」(20代男性)
ガソリンエンジンの車でエアコンを使用する場合、エアコンのコンプレッサーを回すためにエンジンの出力が一部利用されます。そのため、特に排気量が小さく元々のパワーが控えめな車では、エアコン使用時のエンジンの出力ダウンが顕著に感じられることがあるのです。上り坂での加速の鈍りなどは、まさにその典型と言えるでしょう。
エアコンによるパワーダウンはAT車でも起こりうる現象ですが、「エアコンによる快適性」と「本来の出力を発揮することによる走行性能」を天秤にかけ、後者を選ぶのは、「MT乗りならでは」の深いこだわりの表れと言えるかもしれません。
また、エアコンON/OFFでエンジンの出力特性が変わることで、「シフトチェンジがギクシャクする」というのも夏のMT車にありがちなポイントです。暑さで気分がすぐれないように見えるドライバーの様子も、実はエアコンの有無による微妙な挙動変化に愛着を抱いているがゆえ、なのかもしれません。
覚悟はいいか?終わらない「半クラ地獄」の試練

夏のドライブに渋滞はつきものです。特に、お盆期間中は年間でも交通量がピークを迎える時期の一つであり、MT乗りにとっては過酷な試練となります。
渋滞中は、発進と停止が繰り返され、MT車の場合、そのたびに半クラッチ操作が求められます。これが、左足に尋常ではない負担をかけるのです。
「車を買い替えたばかりの時、お盆の中央道で4時間くらいの渋滞にハマり、途中から左足がピクピク震えて止まらなくなりました。その前が軽でクラッチも軽かったので、乗り替えて重さに慣れていなかったこともあると思います。膝から下をうまくコントロールできなくなりましたが、左膝を手で押すようにしながらどうにかサービスエリアまで辿り着きました。毎回ガクガクさせてしまい、何度かエンストもしてしまいました。周りに申し訳ない気持ちでいっぱいでしたね」(40代男性)
長時間にわたる繊細なクラッチ操作は、想像以上に左足の筋肉を酷使します。さらに、エアコンの冷えすぎや水分不足なども加わり、夏場は足がつりやすい季節でもあります。MT車に限らず、長時間の運転が予想される際には、こまめな休憩、ストレッチ、そして十分な水分補給を意識することが非常に重要です。
MT車ならではの「操る楽しさ」を追求するドライバーたちが、夏という季節に直面する様々な「あるある」な悩み。しかし、それらの困難すらも愛車の個性として受け入れ、乗りこなしていくところに、MT車の奥深い魅力があるのかもしれません。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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