「己より賢明な人物を周辺に集めし男、ここに眠る」とは、米国の「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーの墓碑銘です。「三顧の礼」を以て劉備玄徳が諸葛孔明を迎えられたのもそうですが、畢竟その人間の人間的魅力の有無に尽きると言えましょう。人間がある程度の人物か否かは、その風貌から立居振舞そしてまた発言に至るまで全ての所で表れてきますから、その中には能力や手腕といったことも勿論含まれ、ある意味での人間力というようなより大事なものが表れてきます。

結局会社を成長させるには、経営者自身が自分を練って行くしかないのです。自分自身の人間力を増して行けば、会社の器も大きくなります。ビジネススクールの教科書に出て来る成功の条件の類を満たしたところで、成功する経営者は殆ど出ては来ないでしょう。小学校を卒業しただけで世界的事業を興した松下幸之助さんや本田宗一郎さんなどは、恐らくそうした類を気にもしたことがないでしょう。本田さんも松下さんも、「人間如何に生くべきか」「人間どう在るべきか」というような答え無き問いに対する答えを様々考え抜いて知性を磨き、知行合一的に事上磨錬する中で人物たるの条件を段々と満たして行った結果として、会社を大きくする正しい道を世のため人のために歩まれたのだろうと思います。

編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。