衝撃の結末と虚偽(ホークス)の発覚:「これは番組のため」

 全米中が安堵したのも束の間、事件は急展開を迎えます。同日夜、ヒーニー一家はCNNの人気番組『ラリー・キング・ライブ』に生出演。司会者から「なぜガレージから出てこなかったの?」と質問されたファルコン君は、こう答えてしまったのです。

「You guys said that, um, we did this for the show.」 (だって、パパたちが ** 「これは番組のためだ」 ** って言ってたから…)

 この一言が決定打となり、世間の同情は一気に疑惑と非難へと変わりました。翌日のテレビ番組では、同様の質問をされたファルコン君が嘔吐する場面もあり、事件が売名目的の狂言であったという疑いは確信へと変わっていきました。

コロラド気球事件(バルーンボーイ事件)の全貌:Netflixドキュメンタリーが暴く現代メディアの闇の画像3
(画像=画像は「Trainwreck: Balloon Boy | Official Trailer | Netflix/YouTube」より)

なぜ嘘をついたのか?ヒーニー一家の背景と動機

 なぜヒーニー夫妻は、これほど大掛かりな嘘をついたのでしょうか。その背景には、夫妻の「有名になりたい」という強い渇望がありました。

** 売名への執着 ** :父リチャードは俳優やコメディアンを目指すも成功せず、ストームチェイサー(嵐の追跡者)やUFO研究家として注目を浴びようと活動していました。 ** リアリティ番組への出演歴 ** :ヒーニー一家は、事件前に人気リアリティ番組『Wife Swap』(邦題:億万長者とマッド・サイエンティスト)に2度出演し、その奇抜なキャラクターで知られていました。 ** テレビ企画の失敗 ** :リチャードは自ら考案したリアリティ番組『The PSIence Detectives』の企画をテレビ局TLCに持ち込みましたが、採用されませんでした。

 警察の捜査で押収された妻マユミのメモには、事件の計画が詳細に記されており、一家がリアリティ番組契約を得るために、子供たちに嘘をつくよう指示していたことが明らかになりました。

事件の代償:法的責任と社会的影響

 虚偽報告の代償は大きいものでした。法的責任として、父リチャードは公務執行妨害未遂の罪で禁錮90日と賠償金3万6,000ドルの支払いを命じられました。母マユミも虚偽報告の罪で、週末のみ収監される形の禁錮20日という判決を受けました。

 しかし、代償は法的な罰だけにとどまりません。一家は世界中から激しいバッシングを浴び、「アメリカで最も嫌われた家族」とまで呼ばれるようになり、厳しい社会的制裁を受けることになったのです。

 夫妻は「妻マユミ(日本国籍)の国外追放を避けるために司法取引に応じただけで、事件は狂言ではない」と一貫して無罪を主張し続けました。そして2020年12月、コロラド州知事は「彼らはすでに世間の目で裁かれ、代償を払った」として、夫妻に恩赦を与えました。

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(画像=画像は「Trainwreck: Balloon Boy | Official Trailer | Netflix/YouTube」より)