それはまるで、惑星だけでなく、その後ろに何かが長く尾を引いて恒星の光を遮り続けているかのようでした。

こうして発見されたのが、今回の主役である「溶ける惑星・BD+05 4868 Ab」だったのです。

なぜ惑星は溶けているのか?

溶ける惑星「BD+05 4868 Ab」は、地球からおよそ140光年離れた場所にある岩石惑星です。

その公転周期はたったの30.5時間という超短周期で、中心部の恒星のすぐ近くを猛スピードで回っていました。

その距離は、太陽と水星の距離の20分の1ほどしかなく、非常に過酷な環境にさらされています。

この近さのため、惑星の表面温度はおよそ摂氏1820度にも達すると推定されており、表面の鉱物が溶けてマグマとなり、それらが気化して宇宙空間に噴き出していたのです。

こうして噴き出した物質は塵となって広がり、惑星の後方に最大で900万キロメートルもの尾を形成していると推定されました。

これは地球から月までの距離の20倍以上にも相当します。

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溶ける惑星と彗星のような尾のイメージ図/ Credit: MIT – Astronomers discover a planet that’s rapidly disintegrating, producing a comet-like tail(2025)

さらに驚くべきことに、この惑星は1回の公転ごとにエベレスト山1個分の質量を失っていると推定されており、まさにリアルタイムで急速に蒸発しながら崩壊しているのです。

惑星自体の質量は月から水星の中間程度で、重力が非常に弱いため、一度物質が飛び出すともう引き戻す力がありません。

これにより「蒸発→重力低下→さらなる蒸発」という悪循環に陥っており、今後100万〜200万年以内に完全に消滅すると考えられています。

チームは今後この塵の成分を調べるために、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測を予定しています。