研究者たちは、第一世代大学生が新たな社会階層に適応する過程で、性格特性にも変化が生じるのではないかと仮説を立てていました。
その点を調べるために、研究者たちは、ドイツの全国代表調査「SOEP(Socio-Economic Panel)」のデータを用い、約4,776人の若者を10年以上にわたって追跡。
対象は17歳から30代に至るまでで、大学進学の有無によって2つのグループ「第一世代大学生グループ」と「進学しなかった同世代グループ(安定低学歴群)」に分けました。
さらに、出発点での性格傾向や家庭環境を統制するため、高度な統計手法を用いて、比較の公平性を担保しました。
そして研究で分析されたのは、ビッグファイブ性格特性(外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、開放性)と、リスク選好の傾向(リスクを好むかどうか)、コントロール感(自分の人生に対する影響感)といった心理指標です。
分析の結果は、研究チームの予想を裏切るものでした。
大学に行って「変わらなかった性格」と「身につく慎重さ」
研究チームにとって結果は意外なものでした。
まず、両グループで年齢とともに誠実性(責任感)が上昇するという傾向は共通していました。
これは大学進学と関係なく、成人期に入ると責任感が高まる傾向にあることを示しています。
また、大学に行くかどうかで、外向性、協調性、開放性、情緒安定性など、ほとんどの性格特性に大きな差は見られないことも分かりました。
つまり、たとえ家庭とは異なる文化的環境に身を置いても、人間の基本的な性格はあまり変わらないのです。

研究チームは次のように述べています。
「全体的に性格の変化がほとんどないことに驚きました。
もしかしたら性格の変化は、もっと長い期間、もしくはより微妙なメカニズムを経てはじめて生じるのかもしれません」