イランの国内事情やポスト・ハメネイの不透明さを考えると、イランの核問題を解決する唯一の方法は現時点では米国主導でイランと核協議を再開し、イランが2度と核開発計画を行わないように拘束力のある合意を実現することだろう。
カナダ西部のカナナスキスで開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、①イスラエルの自衛権を認める、②イランの核兵器製造につながる核関連活動を絶対に容認しない、③イランの核問題は最終的には関係国間の外交交渉で解決すべきだ、という3点から成る共同声明が発表されたばかりだ。
AFP通信によると、フランスのマクロン大統領は「イランの政権交代は混乱を意味する」と指摘、米・イスラエル両国の軍事力によるイランの政権交代には反対している。 同大統領は、2003年のイラク指導者サダム・フセイン政権打倒や2011年のリビアの長期統治者ムアンマル・アル・カダフィ大佐の殺害につながった米国主導の軍事介入とその後のカオスに言及しながら、「交渉のテーブルに戻るべきだ」と述べている。
参考までに、ハメネイ師の失脚後の後継政権について少し考える。
86歳の高齢で病気持ちのハメネイ師には今回のイスラエル攻撃がなくても後継者問題が常に囁かれてきた。ハメネイ師の後継者と見られたライシ大統領は昨年5月19日、搭乗していたヘリコプターの墜落事故で死去した。後継者候補者が集まっていた同国安全保障に関する最高意思決定機関「国家安全保障会議」のメンバーの半数は今回のイスラエル軍の攻撃で殺害された。すなわち、有力後継者というべき人物がいなくなったのだ。
それではライシ師後の大統領選で当選したペゼシュキアン現大統領はどうか。同大統領は聖職者ではなく、医者であり、改革派と言われてきた。ぺゼシュキアン氏(70)は大統領選では対抗候補者の保守強硬派ジャリリ最高安全保障元事務局長を大差をつけて当選した。イラン国民にはある程度の信頼を得ているわけだ。