未知の粒子か、ダークマターか…深まる謎

 では、この信号の正体は一体何なのだろうか。研究チームは、他の観測施設「IceCube実験」や「ピエール・オージェ観測所」のデータとも照合したが、同様の信号は見つからなかった。この奇妙な信号は、ANITAだけが捉えた特別な現象なのだ。

 考えられる仮説はいくつかあるが、いずれも決定的な証拠はない。宇宙の大部分を占めるとされながらも正体不明の「ダークマター(暗黒物質)」が関わっている可能性や、我々がまだ知らない全く新しい素粒子や物理法則が存在する可能性も指摘されている。

 ウィッセル氏は、「氷の近くや地平線の近くで、私たちがまだ理解していない特殊な電波の伝わり方が起きているのかもしれません。しかし、それも検証しましたが、まだ見つかっていません。今のところ、これは長年の謎の一つです」と、その難しさを語る。

 研究チームは現在、「PUEO(プエオ)」と呼ばれる、より大型で高感度の新しい検出器を開発中だ。この次世代機が稼働すれば、より多くの異常信号を捉え、その正体を突き止めることができるかもしれない。

「もちろん、本来の目的であるニュートリノを検出できれば、それはもっとエキサイティングですけどね」と、ウィッセル氏は笑顔で付け加えた。

 南極の氷の下に眠る謎が解き明かされる日は、そう遠くないのかもしれない。

参考:The Debrief、ほか

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