音楽事業にも映画事業にも横展開
ソニーGにとってアニメ事業は今、どのような位置づけなのか。
「もっとも注力すべき事業になっています。世界的にアニメが人種や文化、宗教の差異なく日本のアニメが視聴されるという現象が起きています。たとえば1990年代につくられた『美少女戦士セーラームーン』は南米などでも広く見られていると聞いています。これは、1990年代に日本のアニメ会社が非常に安い価格で海外に積極的に作品を販売し、南米の放送局が毎日のように放送して、かつ何度も再放送しているために幅広い年齢層に浸透している模様です。イスラム圏でも日本のアニメが見られており、世界中で受け入れられるようになっています。加えて世界のアニメ市場は成長しているので、ソニーGがそこに注力するのは非常に理にかなっています。
他の事業との相乗効果や連携も進めやすいです。アニソンというジャンルがあるように音楽とも相性が良く、アニメでは主題歌やエンディング曲も流れますので、SMEが子会社のアニプレックスを持つのは自然な流れです。また、映画でも近年では劇場版アニメのヒット作が出るようになっており、実写版の邦画をつくるよりはアニメの映画版をつくるほうが大きなリターンが見込めるというかたちになってきています。これから世界でアニメ映画を見る人が増えると予想されているので、映画事業とのシナジー効果も非常に大きいでしょう」(安田氏)
ゲーム事業との連携に課題
アニメ事業の成長に向けては課題もあるという。
「SIEはアニメのゲーム化をあまり好ましいと思っていないように見えます。過去にゲーム画面に表現規制を行った実績があったようなので日本のアニメをゲーム化したタイトルはPS5で展開するのが難しい状態が続いてます。SIEの本社が米国にあることも影響してか、女性キャラクターでることに大して、快く思っていないのではないでしようか?
この結果、本来であればアニメ、映画、音楽、ゲームの各事業は非常に高いシナジー効果が期待されますが、ゲーム事業ではうまくそれが発揮されておらず、その点は課題といえるでしょう。もったいない状態ではありますが、あと20年ほどして日本のアニメに抵抗がない世代の人たちが幹部に就くようになるとこの問題は、改善されるのではないでしょうか。
もっとも、音楽・映画事業とアニメのシナジー効果は出てきていますし、悪い状況ではありません。クランチロールのアニメ配信サービスはサーバーにデジタルデータを置いておけば、ユーザーが再生するたびにどんどんお金が入ってくる状況が生まれるので、将来的には有望な事業でしょう。日本を舞台とするアニメが世界中で見られるという現象が広がっているんで、もっと英語圏でも見られるようになれば、アニメ事業は順調に成長していくと考えられます」(安田氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=安田秀樹/東洋証券シニアアナリスト)