捻挫や骨折、あるいは筋肉や靱帯の損傷。
誰もが一度は経験する「ケガ」の回復には、安静とリハビリが欠かせません。
しかしそれ以外にもう一つ、ケガの治癒に大きく関わるものがあります。
それが私たち人間の大好きな「お酒」です。
実はケガの治療期間中に飲酒をすると、治りが悪くなることがわかっています。
ここでは、ケガをしているときにお酒を控えるべき5つの科学的な理由を説明します。
目次
- なぜケガ中の「飲酒」が回復を妨げるのか?
- ホルモンと運動機能にも影響が
なぜケガ中の「飲酒」が回復を妨げるのか?

理由その1:免疫機能の妨害
まず1つ目は、飲酒が免疫機能の働きを妨害してしまうことです。
アルコールは、免疫細胞が傷ついた組織に集まって修復を行うプロセスを妨げます。
これにより、筋肉や靭帯、腱の再生が遅くなり、損傷した細胞の除去や腫れの収束も遅延するのです。
特に大量飲酒(1度に4〜5杯以上)は免疫の働きを3〜5日間低下させるとされており、感染のリスクも高まります。
中程度の飲酒(1〜3杯)であっても、患部の腫れや痛みが長引くことが明らかになっています。
理由その2:筋肉の再生が阻害される
これまでの研究で、筋肉を修復・構築するために不可欠な「筋タンパク質合成」は、アルコール摂取後24〜48時間にわたり抑制されることがわかっています。
ある研究では、この合成能力が飲酒によって24〜37%低下することが確認されました。
このプロセスが遅れると、筋肉の弱さや痛みがなかなか解消されず、再受傷のリスクも高くなるのです。
理由その3:骨・靭帯・腱の回復遅延
ケガをした部位では普通、自然治癒を促すためのシグナルが体内で発せられます。
ところがアルコールを摂取すると、このシグナル伝達が妨げられるのです。
結果として、ケガの回復が遅れ、損傷部位に過剰な腫れや瘢痕(きずあと)が残りやすくなります。