そして取得された画像データから明らかになったのは、南極付近の磁場が予想以上に複雑で“混沌”としているという事実でした。

通常、磁場は北と南に分かれて整然と配置されるものですが、極域では両極性の磁場がモザイク状に入り乱れていたのです。
この「磁場の混沌」は、太陽極大期(太陽磁気が反転し、最も活発になる時期磁場反転期」ならではの現象です。
そして数年後の太陽極小期にに向けて、磁場がどのように再編されていくのか、そのプロセスを追跡することで太陽活動の未来予測精度が飛躍的に向上することが期待されています。
このように、ソーラー・オービターによる観測は、単なる極域画像の取得にとどまらず、太陽物理学のあらゆる分野に新たな光を投げかける出来事となりました。

そして何よりも心強いのは、これはまだ「第一歩」に過ぎないという点です。
探査機は今後さらに軌道を傾け、2029年には黄道面から最大33度まで傾いての観測が予定されています。
まさに、太陽という恒星を“あらゆる角度で”見つめる時代が始まっているのです。
全ての画像を見る
参考文献
Solar Orbiter gets world-first views of the Sun’s poles
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Solar_Orbiter/Solar_Orbiter_gets_world-first_views_of_the_Sun_s_poles
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。