興味深い点は、「イランの古代国旗には、獅子はほぼ500年間、ペルシャの君主の国旗には描かれていた」というのだ。レーゲンスブルクのライプニッツ研究所の旗の専門家ペーター・マリオ・クロイター氏が独紙ビルトに答えている。同氏によると、「ホメイニー師が1979年、亡命先のフランスから帰国し、イラン革命を行ってイランをイスラム教国家に変貌させた後、ライオンは国旗から消え、イランの国旗には4つの三日月と剣が描かれた。これはイスラム教の五行を象徴している」と言うのだ。
一方、「ビルド」紙によると、このライオンはイラン反体制派によって利用されていることから、「イスラエル軍の作戦名の選択は、その目的がムッラー(イスラム法学者)の打倒にあるか、あるいはイスラエルがイラン国民とその指導者を区別していることを意味する狙いがあるからではないか」と憶測できるというのだ。
なお、ネタニヤフ首相は2023年10月28日、イスラム過激派テロ組織「ハマス」のイスラエル奇襲テロ事件直後、旧約聖書「申命記」や「サムエル記上」に記述されている聖句「アマレクが私たちに何をしたかを覚えなさい」との箇所を引用している。モーセがエジプトから60万人のイスラエルの民を引き連れて神の約束の地に向かって歩みだした時、アマレク人は弱り果てていたイスラエルの民を襲撃した。ネタニヤフ首相は当時、「ハマスの奇襲テロ」を「アマレク人の蛮行」と重ね合わせて語ったことは明らかだった。すなわち、1,200人以上の国民を殺害し、250人以上を人質にしたハマスの蛮行を忘れてはならないという意味だ。ネタニヤフ首相はその後、「ハマス撲滅」を宣言し、ガザのハマスの拠点に激しい報復攻撃を展開させている。
すなわち、ネタニヤフ氏はユダヤ民族の存続をかけた「ハマス壊滅」や「イラン攻撃」を決定する際、宗教学者のように聖典の聖句にその拠り所を求めているのだ。ネタニヤフ氏の政治延命に過ぎないという声もあるが、国難に直面し、ネタニヤフ氏は自身のユダヤ民族のDNAがうずき出し、預言者のようにヘブライ語聖書の世界に引き戻されるのかもしれない。