イランは昨年10月1日、イスラエルが9月27日、イランが軍事支援するレバノンのシーア派武装勢力「ヒズボラ」の最高指導者ナスララ師を殺害した報復として約180発の弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射した。それに対して、イスラエルは10月26日、イランに報復攻撃。イスラエル側の発表では、3基のS-300地対空ミサイルシステムが破壊され、イランはロシア製のこの防空システムを失った。また、ロケット用固体燃料の部品製造施設が破壊された。

イランはイスラエル軍の攻撃が近いことを受け、今年に入り、ペルシャ語で「信頼」を意味するエテマドと名付けられた射程距離1,700キロメートルの新型弾道ミサイルを初公開している。エテマドはイラン国防省が開発した最新の弾道ミサイル。長さ16メートル、直径は1.25メートルで、衝突するまでミサイルを操縦できる誘導弾頭を備えている。また、イランはロシア製最新戦闘機SU-35を購入したという。イスラエル空軍の主用戦闘機F-35対策だ。

なお、イスラエル軍のイラン攻撃に米軍の関与はなかったという。米国はイランの核兵器保有阻止に向けて同国との核協議を優先。トランプ米大統領は3月7日、核交渉の可能性を念頭にハメネイ師に書簡を送り、対話を求めている。ルビオ米国務長官は今回のイスラエル軍のイラン攻撃について、「イスラエルが単独行動を取った」と表明。米軍基地などを報復の対象にしないようイランに警告した。

ちなみに、イランを取り巻く政治・経済情勢は厳しい。イランは、宿敵イスラエルを打倒するためにこれまでパレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム過激派テロ組織「ハマス」、レバノンの民間武装組織ヒズボラ、イエメンの反体制派武装組織フーシ派に軍事支援してきた。同時に、アサド政権下のシリアに対してもロシアと共に軍事支援してきた。しかし、ハマスはイスラエル軍の報復攻撃を受けてほぼ壊滅状況だ。ヒズボラはイスラエル軍によって最高指導者ナスララ師が殺害され、統制が難しくなってきた。そしてアサド政権の崩壊だ。