世界的シンガーソングライターのエド・シーランが、人工知能(AI)の急速な発展に強い懸念を示した。彼は、「マトリックス」や「ターミネーター」に象徴されるAIの脅威が現実になる可能性に言及しつつ、AIがもたらす人間性の喪失について、率直な危機感を表明している。

映画が警告していた未来が現実に?

 シーランは、「70年間もAIが人類を滅ぼす映画を作り続けてきたのに、なぜ今も資金を投じて開発を進めているのか理解できない」と語る。彼にとって、映画で描かれたディストピアは、もはや空想ではない。

 また、近年のハリウッドでもAIによる俳優の“クローン”が問題視されており、ストライキが起こるなど、エンタメ業界の現場でも現実の危機が始まっていると指摘する。

「心のない作品には、人を感動させる力はない」

 エド・シーランがとりわけ問題視しているのは、AIが生み出す創作物に“感情”が欠けていることである。彼はこう語る。

「AIに“心”は持てない。だからAIが作った映画を観て、涙を流すなんてことはないと思う」

 音楽や映画、芸術には“その瞬間の気持ち”が込められているからこそ、人の心を動かす。しかしAIはそれを再現できないというのが、彼の持論である。

 さらに彼は「どんな商品であれ、“心”がないものは健康的ではない」とも述べ、AIによる創作物は質の面でも劣ると断じた。

雇用の喪失とフェイク情報の蔓延

 シーランはAIの進化によって人間の仕事が奪われる現実にも警鐘を鳴らしている。「毎日人間は増え続けているのに、AIが仕事を奪ったら未来はどうなるのか」と疑問を呈し、特に映画などで働くエキストラたちが「生活の糧」を突然失うことへの懸念を示した。

 さらに、自身と妻の写真を使ったAIによる偽の妊娠報道がSNSで拡散されたことにも触れ、「偽情報が簡単に出回る時代は健全とはいえない」と強調。ディープフェイク技術の悪用が個人の生活にまで侵食している実態を明かした。

エド・シーラン「気味が悪い」AIが台頭する感情なき未来に警鐘の画像2
(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI))