仮に現在日本で観光業すらダメなら円安はさらに進行していただろう。そう考えると「観光はダメ」ではなく、「観光に救われている。どのようにさらなる付加価値を引き出すか?」と解釈する方が生産的だ。
課題は解決できる
もちろん、いいことだけではない。渋滞やマナー違反などの副産物も出てしまう。円安は是正されても、インフレは起きる。
だが、それはすべてのビジネスについて言えることだ。たとえば、製造業は大量のエネルギーを消費し、CO2排出や工業廃水の問題を引き起こす。ITサービスは雇用が都市に集中するので、さらなる地方の人材流出と経済格差を加速させる。
現在、観光業が抱えている課題は解決できるものも少なくない。たとえば観光地の一極集中と混雑については、ダイナミックプライシングや時差入場でピークを平準化できる。地方と二都市間をパスで結ぶことで滞在を延ばし、客単価も向上するだろう。
また、労働生産性について言えば、QRチケット、AI翻訳チャットボット、混雑可視化アプリでストレスを低減できる余地があるだろう。そして、京都市の宿泊税のように、徴収分を公共交通や文化財保全へ循環させるスキームを全国に拡張することで観光業からの収益を高める。
観光業に文句ばかりでは前には進めない。課題はあれど、いつの時代も創意工夫で人類は乗り越えてきた歴史がある。
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日本は円安と文化的魅力という追い風で観光業が盛り上がっている。もちろん混雑や物価上昇の副作用は無視できない。だが人口減と内需縮小が進む中で、観光という外需を呼び込めない状況こそが真の地獄だろう。
SNSで見かける「観光で稼ぐのはダサい」という意見は悲観ばかりで、「現況からさらにメリットをどう引き出すか?」という前向きな意見が少ないように思える。
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