チームは特別に開発された気候・化学モデル「SOCOL:14C-Ex」を用い、古代の樹木や氷床コアを分析したところ、紀元前1万2350年ころ(今から約1万4000年前)に、人類の記録上最強の太陽嵐が発生していたことが判明したのです。
これまでにも同様の強烈な太陽嵐イベントは西暦994年、紀元前660年、紀元前5259年、紀元前7176年に起きていたことが特定されており、その中でも西暦774年の事例が最大とされていました。
しかしチームの解析によると、紀元前1万2350年の太陽嵐は、西暦775年の太陽嵐よりも約18%強力だったと推定されています。
さらには人工衛星による正確な観測が始まって以来の最強の太陽嵐は2005年に発生していますが、紀元前1万2350年の太陽嵐はそれより500倍以上の強度があったと試算されたのです。
では、なぜ当時の太陽嵐はこれほど強烈だったのでしょうか?
BC12350の太陽嵐が最強だった理由
まず、当時の地球の磁気シールド(地磁気)が現在よりも弱かったことが大きな要因とされています。
地磁気は太陽から飛来する高エネルギー粒子を遮蔽するバリアの役割を果たしますが、その防御が弱まっていたため、より多くの粒子が地球の大気圏に到達したと推定されます。
実際、チームの推定によると、当時の地磁気は現代の約3分の2の強さしかなかったとされており、それにより太陽嵐の粒子が地球全体により広範囲に降り注いだとみられています。

ただ、このような強力な太陽嵐が地球に与えた直接的な影響については、当時の文明活動が未発達だったため記録は残されていません。
BC12350年はすでに人類も繁栄を始めていたため、何らかの被害を被った可能性があります。
しかし現代社会に同等の嵐が発生した場合を想定すると、そのリスクは深刻です。