2つの大きな違い
主な特徴や注目すべき特徴について、ITジャーナリストの酒井麻里子氏は次のように解説する。
「メタ『Aria Gen 2』は、あくまでも研究開発用のデバイスで、これ自体が製品化されるわけではありません。グラス型のデバイスに複数のカメラや視線追跡機能、手の動きを検知する3Dハンドトラッキング、心拍センサーなどが搭載され、装着者自身やその周囲の環境を検知してデータを集めることができるようになっています。加えて、デバイス内で処理が完結する(オンデバイス)AIも搭載され、収集したデータを扱えるようになっています。研究者がこのデバイスを使ってデータを集め、AIをトレーニングすることが主な目的です。
グーグルの『Project Aura』は次世代ARデバイスの製品化に向けたプロジェクトで、ARデバイスメーカーのXreal、デバイスに搭載するチップを開発するクアルコムとの協業で進められています。具体的な製品の発売時期は未公表ですが、5月のGoogleI/Oでは試作機を使ったデモとして、グーグルのAI『Gemini』を使ったリアルタイム翻訳や道案内の様子が披露されています」
2つの大きな違いは何か。
「メタのAria Gen 2は『研究者のデータ収集用』、グーグルのProject Auraは『一般向け製品のリリースを前提としたプロジェクト』という違いがあります。レストランで新メニューを開発する場合にたとえるなら、Aria Gen 2は『シェフが厨房で試行錯誤している』段階、Project Auraは『メニューの方向性が固まり、常連客向けに試食会を実施している』段階というイメージです。どちらのメニューもまだ、一般客が注文して食べることはできません。
グーグルのProject Auraは、この先のロードマップがある程度明らかになっています。まず、6月11日には、米国で開催されているXRカンファレンス『Augmented World Expo』のなかで、より詳細な情報が発表されました。そして、今年後半には開発者向けツールの提供を開始するとされています。製品の発売時期は公式には発表されていませんが、早ければ2026年には登場するのではと噂されています。
一方のメタは、具体的なロードマップを公表していません。とはいえ、将来的にAria Gen 2で得られた知見をベースにした製品がリリースされる可能性は高いと思われます。その際には、2社のグラスは似たような機能を備えた競合製品になるかもしれません」(酒井氏)