実際、これまでの研究でも量子もつれの生成過程は理論的に瞬時と近似されることが大半でした。
しかし「ゼロ」と「ゼロに近い」には大きな違いがあります。
そこで今回の研究チームは、「量子もつれがそもそもどのようにして生じるのか、その超短時間スケールでの物理現象を解明したい」という新たな視点で研究を立案しました。
そのために必要なのは、通常は目に見えない超高速の過程を調べる技術です。
この課題に挑むべく、オーストリアのウィーン工科大学を中心とする国際チームは、最新のシミュレーション技術を駆使してアト秒(10^−18秒)という時間スケールで量子現象を“可視化”する方法を開発しました。
その結果、量子もつれ誕生の時間スケールを理論的に可視化することに成功したのです。
アインシュタインも二度見?量子もつれ完成までには232アト秒の“微妙な間”があった

今回の研究で量子もつれの対象とさせられるのは、ヘリウム原子の中に元々寄り添っていた二つの電子です。
調査ではまず量子もつれ状態を作るために、ヘリウム原子に超高強度・高周波数のレーザーパルスを照射して電子の動きを調べる過程がシミュレーションされました。
するとレーザー光によって原子から1個目の電子がもぎ取られ、原子の外へ飛び出します。
またレーザーが十分に強力な場合、原子中に残った2個目の電子にも影響が及び、強力なエネルギーを与えて軌道を変化させることができます。
こうしてパルス照射後、一方は原子外へ飛び出した電子、もう一方は励起された(高エネルギーの)状態にある電子というペアが生まれます。
ブルグドルファー教授は「この2つの電子は量子もつれ状態になっています」と語ります。
同教授は「片方の電子に測定を行えば、同時にもう片方の電子について何かを知ることができます」とも述べています。