関税が始まる前の大規模な駆け込み輸出(米国GDPには一時的にネガティブに、中国GDPにはポジティブに作用する)の存在を知っている我々にとって中国GDPの加速自体はさほど驚きではないだろう。駆け込み輸出は実際に関税が始まるまでの寿命であり、実際に関税が始まると一気に逆回転するだろう。

鉱工業生産も輸出が増えれば増えるだろう。真水の多寡は置いといて昨年年末から金融緩和と財政拡張が走り続けてはいるため、消費も思いのほか堅調さが続く。

不動産市況の反発は見えておらず、不動産企業の経営悪化懸念はまだ燻っている。その辺はどうしようもないとして、その他の固定資産投資も安定している。関税戦争が始まる直前(2025年3月)のスナップショットでは財政拡張が当面の経済を安定させるのに十分であったことが結論付けられるだろう。

しかし、この財政拡張による景気反発が「関税戦争に備える意味合いも持つ財政拡張を、関税戦争前の経済にぶつけたもの」にすぎないことには要注意である。

2025年1~3月期の公式製造業PMIのコブは終わってしまっている。これは「駆け込み輸出(米国にとっての駆け込み輸入)は、関税が実際に始まると止まる」という本ブログのイメージに沿ったものである。

中国からのコンテナ船出航ペースは既に急速に落ち始めている。これは5月から6月にかけて米国の貨物輸入減に反映されるだろう。

安心して持てない中国資産

というわけで中国資産については結局のところ、前回の記事で述べた「下値がどうやら堅そうなのは分かったとしても、関税のヘッドラインがいつ降ってくるか分からない中で、腰を据えて資金を入れられるほどの安心感はない」という見方が今後も継続せざるを得ない。

関税戦争に対応するための財政拡張が先日のものだったので、すぐに次の実弾が出てくるとも考えづらい。従って中国に限っては「米国の関税への対応は財政拡張でなされるので、増税の米国対比で他国通貨や他国株の方が買いやすくなる」ストーリーを当てはめるのは無理がある。