たとえば、筋トレを日常的にしている人や、成果主義の職場で働く人、生活習慣が整っている人は、自然とテストステロン値が高くなりやすい傾向があります。つまり、自信に満ちて見えたり、社会的な評価に敏感な傾向はテストステロンのせいというより、そうした生活や環境が影響している可能性もあるのです。
そこで今回、研究チームはテストステロンの心理的影響をより直接的に検証するため、実験的にテストステロンを投与して因果効果を確かめることにしました。
研究は中国科学院心理研究所(Institute of Psychology, Chinese Academy of Sciences)を中心とした国際共同研究として行われ、スイスのチューリッヒ大学などからも研究者が参加しています。
被験者となったのは、18歳から35歳までの健康な成人男性176人です。
彼らはランダムに2つのグループに分けられ、一方にはテストステロンを経皮吸収で投与し、もう一方にはプラセボ(偽薬)を使用しました。
被験者には自分に関する社会的評価を受けてもらい、それをもとに自己評価を報告してもらっています。
評価の内容は「あなたは協力的です」「あなたは利己的です」といった、性格に関する他者のフィードバック形式で示されていて、テストステロンの投与によって、こうした「他人からの評価」が、どのように自己イメージを変動させるかが分析されました。
さらに、研究者たちはこの自己評価の変化を「状態的自己評価(state self-esteem)」としてモデル化し、反応の強さを数理的に測定するアルゴリズムを導入しました。
この点においても、この研究は単なる心理テストにとどまらず、神経認知科学的な手法と計算モデルを融合させた現代的なアプローチを取っています。
ではテストステロンは実際に、どのように男性の心理影響したのでしょうか?