がん治療がひと段落しても、気を抜けない理由——それは「再発」という見えない不安が常につきまとうからです。

たとえ手術や化学療法でがんを取り除いても、何年か後に再び現れる可能性は決してゼロではありません。

そんな中、世界6カ国の889人の大腸がん経験者を対象にした国際共同研究が、まったく新しい武器を提示しました。

それは、特別な薬や手術ではなく、”運動”。

カナダ、アルバータ大学(University of Alberta)の研究は、17年間にわたる追跡調査の末、運動が大腸がんの再発率と死亡率を有意に下げることを証明しました。

この成果は、2025年6月1日付で医学誌『New England Journal of Medicine』に掲載されています。

目次

  • 再発しやすい大腸がん―治療後の運動がもたらすメリットとは?
  • がん治療後の運動は再発リスクを28%、死亡率リスクを28%低下させる

再発しやすい大腸がん―治療後の運動がもたらすメリットとは?

大腸がんは、世界で3番目に多く診断されるがんであり、がん関連死の原因としては2番目に位置します。

とりわけステージIIIの大腸がんは治療後も約30%の患者が再発を経験するため、治療後の経過観察と再発予防がきわめて重要です。

治療後は基本的に経過観察に入り、患者には健康的な生活習慣の維持が推奨されています。

しかし、それが再発リスクに具体的な影響を及ぼすかどうかは、明確な証拠がありませんでした。

過去の観察研究や動物実験では、運動ががん細胞の増殖を抑えたり、免疫機能を高める可能性が示唆されていました。

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再発しやすい大腸がん。運動がもたらす効果を調査 / Credit:Canva

そこで立ち上がったのが、アルバータ大学や他の大学からなる研究チームです。

今回の研究の目的は、運動が単なる生活改善の手段ではなく、がん治療の一環として再発や死亡のリスクを減らせるかを科学的に明らかにすることでした。