ネット証券大手カブドットコム証券では、近年多くのIPO銘柄を取り扱っている。IPOは値上がり期待が高いといわれており投資家の間でも人気が高いが、証券会社ごとに抽選方法が異なるため、当選確率も変わってくる。今回はカブドットコム証券のIPOの抽選方法や申込方法について解説しよう。
カブドットコム証券のIPOの状況
カブドットコム証券は三菱UFJフィナンシャルグループのグループ会社でインターネット専業の証券会社だ。低価格の手数料が魅力で、近年はIPOにも力を入れている。以下の表は過去10年間の同社のIPO取扱銘柄数だ。
・過去10年間のカブドットコム証券IPO取扱銘柄数
年 | 取扱数 |
---|---|
2009 | 11 |
2010 | 16 |
2011 | 18 |
2012 | 26 |
2013 | 16 |
2014 | 21 |
2015 | 18 |
2016 | 20 |
2017 | 28 |
2018 | 24 |
2009年のIPO取扱銘柄数は11社であったが、2018年には24社と2倍以上増加している。2018年の主要オンライン証券のIPO取扱銘柄数では、SBI証券の86社、マネックス証券の50社、岡三オンライン証券の45社についで多い。以下は同社の2019年、2018年のIPO取扱銘柄一覧表だ。
上場日 | 銘柄コード | 銘柄名 | 市場 |
---|---|---|---|
2月27日 | <4430> | 東海ソフト | 東2 |
2月28日 | <7050> | フロンティアインターナショナル | 東マ |
3月5日 | <1887> | 日本国土開発 | 東1 |
3月13日 | <4434> | サーバーワークス | 東マ |
3月14日 | <7057> | エヌ・シー・エヌ | JQ |
3月19日 | <4436> | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 東マ |
3月19日 | <1451> | KHC | 東2 |
3月28日 | <7674> | NATTY SWANKY | 東マ |
6月12日 | <7065> | ユーピーアール | 東2 |
6月19日 | <4443> | Sansan | 東マ |
6月26日 | <7677> | ヤシマキザイ | 東2 |
6月27日 | <7678> | あさくま | JQ |
7月24日 | <7804> | ビーアンドピー | 東マ |
上場日 | 銘柄コード | 銘柄名 | 市場 |
---|---|---|---|
3月16日 | <6569> | 日総工産 | 東1 |
3月22日 | <9270> | SOU | 東マ |
3月23日 | <6571> | キュービーネットホールディングス | 東1 |
4月20日 | <4382> | HEROZ | 東マ |
5月31日 | <4384> | ラクスル | 東マ |
6月19日 | <4385> | メルカリ | 東マ |
6月21日 | <9273> | コーア商事ホールディングス | 東2 |
6月26日 | <9274> | 国際紙パルプ商事 | 東1 |
6月27日 | <4389> | プロパティデータバンク | 東マ |
7月10日 | <7806> | MTG | 東マ |
8月22日 | <4397> | チームスピリット | 東マ |
9月28日 | <3612> | ワールド | 東1 |
10月10日 | <7041> | CRGホールディングス | 東マ |
10月12日 | <4420> | イーソル | 東マ |
10月12日 | <4598> | Delta-Fly Pharma | 東マ |
10月19日 | <9279> | ギフト | 東マ |
12月12日 | <4423> | アルテリア・ネットワークス | 東1 |
12月13日 | <7670> | オーウエル | 東2 |
12月19日 | <9434> | ソフトバンク | 東1 |
12月20日 | <7671> | AmidAホールディングス | 東マ |
12月21日 | <7037> | テノ.ホールディングス | 東マ |
12月21日 | <7047> | ポート | 東マ |
12月21日 | <4427> | EduLab | 東マ |
同社と同様に三菱UFJフィナンシャルグループの企業である三菱UFJモルガン・スタンレー証券が主幹事となるIPOを取り扱うことが多い傾向だ。話題になったソフトバンク、メルカリ、ラクスルはその代表格。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が主幹事となる銘柄のIPOについては、カブドットコム証券で申し込むのが有利だろう。
カブドットコム証券のIPO申込方法5ステップ
カブドットコム証券でのIPO抽選に参加する場合は以下の5つの手順で申し込みをする必要がある。順番に見ていこう。
ステップ1最大買付可能額の確認
IPOの申し込みをする前に、まずはカブドットコム証券の口座に買付できる資金があるか確認する必要がある。対象のIPO株の最大買付可能額(余力)が購入可能な資金以上あるかどうか確認しよう。
ステップ2ブックビルディング申込
続いてブックビルディングに申し込む必要がある。ブックビルディングはいくらで何株購入したいかという需要申告のことだ。同社のホームページで手続きが可能だ。
ステップ3購入申し込み
投資家のブックビルディング情報を基に売り出し価格が決定する。売り出し価格の決定後は目論見書(※)を確認し、購入申し込みをすることが必要だ。
ステップ4抽選
コンピュータによる抽選後、IPOの当選結果を同社のホームページで確認可能だ。忘れずに確認しよう。
ステップ5購入
見事当選していた場合、IPO株を購入することができる。購入したIPO株は上場日以降に売却などの注文執行が可能だ。
(※)目論見書
有価証券の募集あるいは売り出しにあたって、その取得の申し込みを勧誘する際等に投資家に交付する文書で、当該有価証券の発行者や発行する有価証券などの内容を説明したもの
カブドットコム証券の抽選方法 完全平等抽選ではない
カブドットコム証券のIPOは、配分予定株の一部は優先的に顧客に分配、一部は抽選という形式をとっているが、詳細な割合については非公開だ。抽選と分配はどのような条件で行われているのだろうか。
抽選となる場合
申込者の数が配分される株の数量より多い場合は抽選となるが、すべてのIPO株が完全に抽選というわけではない。同社は一定割合を抽選による分配とするとしており、その割合は10%以上と定めている。残りの株については、特定の顧客に優先的に分配される。
特定の顧客に分配される場合
配分予定株の一部はコールセンターに申し込みがあった顧客を対象に抽選をせず分配する場合がある。しかしコールセンターに申込をしても必ず購入できるというわけではなくカブドットコム証券を継続的に利用していることなど、いくつか条件がある。対象となる条件は以下だ。
- 投資する商品のリスクを十分に認識していること
- 投資する商品のリスクに対して十分な資産状況であること
- 同社と継続的に取引していること、または取引拡大が期待できること
- 過去の取引上で法令、諸規則、取引ルールを遵守していること
過去の配分実績が過度に集中していないこと
カブドットコム証券と同様に松井証券など一部のネット証券では大口顧客へ抽選をせずに分配する場合がある。ただし上記のようにコールセンターに問い合わせてくる顧客が少なく一定数に満たない場合は、すべての株が抽選になる。
カブドットコム証券のIPO抽選手順
IPOで抽選となった際の方法は以下の通りだ。
- 受付番号順に並べる
- コンピュータによって乱数を割り当てる
- 乱数を数字の小さい順に並べ替える
- 株数に応じて上から順番に当選が決定 この手順通りコンピュータによる乱数での完全な抽選選になるため、抽選になれば誰にでも平等に当選する可能性がある。
カブドットコム証券でIPOを行う際の2つの注意点
カブドットコム証券でIPO投資を行う際に注意する点は以下の2つだ。
注意点1:購入辞退ができない
同社のシステム上抽選の前に購入申し込みをするので当選後の購入辞退はできない。購入以前に上場する会社の情報などを入念に収集し後悔のない取引をしたい。
注意点2:売却時に手数料が必要
他の証券会社でも同様だがIPO株は購入時には手数料がかからない。しかし売却時には通常の現物取引と同様の手数料がかかるため、売却手数料も事前に確認しておこう。
カブドットコム証券のIPOは抽選によらない配分と抽選の2つの配分方法がある。配分予定株すべてが抽選分ではないが、抽選であれば誰にでもチャンスがあるので興味のある会社が同社でIPOを行う際はぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。
文・右田創一朗(元証券マンのフリーライター)
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